音楽大学で「音楽家のための心身論」という名前で週一回の授業を受け持つようになって4年目がもうすぐ終わります。ひとりひとり観られる人数がよいので定員20名にさせてもらっているのですが、毎学期、嬉しいことに希望者が多く、抽選で選ばれた、ピアノ、指揮、声楽、管楽器など専攻の4年生の学生さん方に教えています。週1回14回の授業なので、徐々に生徒さんのなかで経験が深まって変化していく様子が見て取れて、私もやりがいがあります。
「演奏のときに、手や指のことは考えても、それ以外の体のことを考えたことがなかった」と言う学生さんも多くいるので、体に意識を向けることの、演奏への影響を実感できるということだけでも大きな意味があるようです。
音大生なので、みなさん演奏は基本的に上手。
でも、ひとりひとりが、さらに自分のからだとこころに対する信頼感を、自分の核にもつことで、持てる才能をさらに生き生きと伸ばしていったり、また壁にあたったときにも耐えて乗り越えていける知恵を持って、今後の人生につなげていっていただけたらと思うのです。
授業は、学生ひとりひとりの今の課題や気づきを聞きながら、進めて...
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演奏者のためのアレクサンダー・テクニーク
練習量が増えてくると腕の痛みが出てくるというギタリストの方
練習量が増えてくると腕の痛みが出てくるというギタリスト&ギター教師の方。
姿勢もなんだか、前にお会いしたときより猫背に…。
アレクサンダー・テクニークをはじめて、姿勢に気をつけるようになったとのことだが、姿勢の気をつけ方が、細かく部分的になっていて、「全体」という意識が薄くなってしまっていたようだった。
自分全部で弾く
そこに戻ることが、やはり大切。
人間は機械でないので、姿勢や動きの細かいところまで、意識でコントロールする必要はないのだ。(コントロールするつもりになってると、カクカクと、動きが機械みたいになってきたりするので興味深い)。
そういうことは、体がやってくれる、神経システムがやってくれる。
ギターを弾くということは、指だけの仕事ではなく、胴体も関わっているし、胴体は呼吸して動いている、固定させることはない。
気づかないうちに固定させていたことに気づいたら、動いていいんだな、ということを思い出す。意識が変わると体が変わる。
レッスンは、その人の今の課題がどこにあるかを観て、気づいてもっと楽だったり自由になったりする可能性にひらいて...
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続:姿勢についてのアレクサンダー・テクニーク的考え方(作業中、演奏中の姿勢について)
先月書いた、「姿勢」をよくすることについての(私にとっての)アレクサンダー・テクニーク的考え方の続きです。
先月の話をまとめると
よい姿勢、本来無理がないもの
そして、よい姿勢は、動きのなかにあるもの
そして、デスクワークや、作業中の姿勢、楽器を演奏しているときの姿勢についてまた書きたいというところで終わっていたので、続きを書こうと思います。
「よい姿勢」というと、イコール「まっすぐ」をイメージしている人が多いかもしれません。
私は、そうとは限らないと思うのです。
たとえば机の前に座ってペンでものを書くとき、
「まっすぐ座ろう」ということを意識して座り、
それからペンを持って紙に向かうと、
「ペンを紙に向かわせる」動きと、「座っている」という動きが一致していない、べつべつのものになってしまっていることがあります。
そうすると、「書く」動きを、手だけでやることになってしまいやすいのです。
手だけで「書く」ことをやると、手によけいな力が入りやすく、力が入っているわりにはその力が対象のペンと紙まで届かなくて、力強い文字が書きづらくなったりすることが...
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アレクサンダー・テクニークを使った音楽大学での授業
今は夏休み中ですが、国立音楽大学で「音楽家のための心身論」という授業をやるようになって3年目になりました。
前期と後期、週1回、それぞれ計14回の授業をやっています。
「心身論」と言っても言葉で理論をしゃべるのが中心ではなく、少人数で参加型、実践中心に行っています。実践をとおして、心身に関する考え方を身につけてもらえたらと思っています。
定員20名で、学部全体の各専攻からの3、4年生の希望者から抽選された学生が対象。ピアノ、声楽、弦楽器(ヴァイオリンなど)、打楽器(ドラム、ティンパニなど)、管楽器(トランペット、フルート、トロンボーンなど)などを演奏される方々です。
椅子を円座に並べて、一方的に講師のほうを向くのではなく、
お互いの顔が見える形でまず座ってもらって授業ははじまります。
そして、講師の私が問題提起したり、簡単な動きをやってもらったりして、まずは自分の体に対して意識を持ってもらう、というところからはじめました。
「心身」のことを考えるときに、まず自分の体への意識を持ってもらうことが必要だと思うので。
それから、それが自分の演奏にどうか...
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人の顔が見られなくてもいい(続:人前に立つときの緊張や、あがりについて)
きのうの投稿(「オーディエンスをお誘いする」って?)にも関連して…
人前で話したり、パフォーマンスをしたりするとき
「人の顔が見られない」と言う人は少なくないですね。
私もそうでした。
で、「人の顔が見られない」「でも見なくちゃ」
と思うと、「ああ、でも見られない」「でも見なくちゃ…」と、ループにはまってしまうのです。
ループしているうちにますます顔が赤くなってきたりして…。
実はあるときから私は
「人の顔を見なくてもいい」と決めたのです。
見ようとすることで圧倒されてしまうなら、べつに見なくていいと。
ただ、人が居ることには気づいていようと。
(というか、忘れたくても忘れないんですが…)
実は、見ようとすることも大変だけど、見ないようにすることも大変なのです。
圧倒されたくないからといって、人を視線に入らないようにするのは、後ろを向くか、目をつぶる以外にはむずかしい。
(でも実は昔、R.E.Mというロックバンドのコンサートに行ったとき、最後の曲でシンガーのマイケル・スタイプが後ろを向いて観客に背を向けて歌ってくれたことがあり、その歌はすばらしかったです。後ろを向いて歌って...
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