「手が小さい」「小指の力がうまく使えない」「手が痛くなりやすい」という人へのヒント

手が小さいのが悩みです。

手が小さくて、ピアノのオクターブの和音に苦労している人、ギターのFコードを押さえるのに苦労している人…楽器は違うけれど、共通の悩みですね。楽器を演奏する人以外も、いろいろな道具を使うときに、似たような悩みを持つ人は多いかもしれません。

手が小さくても、それぞれの指を意図したところに届けたい―そのために、指のストレッチをしている人もいるかもしれません。ストレッチをする前に、指の構造を、まず見てみましょう。

指とはそもそも、どこからどこまででしょうか?
ぱっと見たところ、手のひらがあって、手のひらの先から指がはじまっているように見えますが、実はそうではありません。手のひらも含めて指なのです。つまり、手のひらの根元から、骨はすでに5本の指に分かれています。手のひらの根元に、手根骨という、小石のような形の骨がいくつかあって、そこから5本の指が、それぞれ少しづつ違う方向に伸びています。

手のひらの根元から、それぞれ違う方向に指が自然に伸びている―そう思うだけで、小指の先から親指の先までが、もっと開くようになっていませんか?

手のひらを力まかせに開くより、適度にゆるめて、その柔らかさを生かして開いてみましょう。ぴんと張りつめさせずに、カーブを生かすと、思っていた以上に大きく開ける、なおかつ、それぞれの指が自由に動かせるのではないでしょうか?

指を長く使う準備として、手のひらを優しくマッサージするのも効果があります。

片方の手のひらを、もう一つの手の、親指と、それ以外の4本の指で挟むように触れてみましょう。手のひらのなかに五本の指がそれぞれあるのが、触れると実感できます。小指のはじまりはどのあたりにあるでしょうか? 小指から順番に、手のひらのなかにある、一本一本の指と指の間を触れてみましょう。それぞれの指が独立していることが実感できますね。

手でがんばりすぎている人は、手のひらが硬くなっていたかもしれません。手のひらをマッサージしているうちに、本来の手のひらのやわらかさが思い出されてくることでしょう。無理に押す必要はありません。認識が変わることで、緊張がほどけてきます。手のひらを柔らかく使うと、それぞれの指が分離して動きやすくなります。

手のひら全体に力が分散するので、手の痛みも起こりにくくなります。親指の根元や、小指の根元が痛くなりやすい人は、ぜひやってみてください。ばね指の予防にもなります。

小指を長く使う

さまざまな楽器演奏において、小指が果たしている役割は大きなものです。でも小指は短いので頼りないと思っている人が多いようです。頼りない小指をなんとかしっかり使おうと、力を入れているかもしれません。

しかし小指は、手のひらに隠れている根元も含めると、手が小さい人でも小指にも十分な長さがあるのです。

そして小指は、背中のパワーを受け取るということもしています。腕の骨(尺骨)をとおってひじの内側へとつながり、そして背中へとつながっています。親指の方が力強いと思っている人が多いかもしれませんが、実は小指の方が力強いとも言えます。小指側で、背中から力を伝え、親指は、細かい微調整をするような役割をしています。

指先だけ見ると、小指は確かに小さいです。だから、指先に力を入れてがんばるのではなく、背中やひじからの力を伝えよう、そう思って小指を使ってみてください。

楽器や道具に手を届かせるとき、小指から届かせてみましょう。

ピアノを弾くなら、まず小指を鍵盤に置き、そのあとで、そのほかの指を置いて和音を弾いてみましょう。手をつっぱらずにオクターブの和音の弾けるのではないでしょうか? 小指を置くときに、ひじから小指までのひとつながりをイメージして、手首をあまり曲げずに置いてみてください。

ギターや弦楽器なら、まず小指を押さえたいところに持っていき、小指が行く方に合わせてひじと前腕を回転させて、手の形を作りましょう。小指が届くためには、ひじの位置と向きをどう持っていくと届きやすいでしょうか? ひじを回転させたり、前後に少し動かしたり、いろいろ試してみましょう。指先に力を入れるのではなく、全体の力を指先から弦に伝えましょう。

クラリネットやフルートを持つときには、楽器を、主に親指で支えているかと思います。が、親指だけで、点で支えていると考えると、親指の負担が大きくなりすぎてしまいます。手全体で楽器をはさんで支えている、と考えてみるとどうでしょうか? 親指以外は、演奏中に動かしていることが多いですが、動かしている指も、全体として、支えるという行為に参加しています。

クラリネットやフルートの場合でも、小指をまず楽器に届かせて持ってみましょう。小指を楽器から浮かせて使っているときでも、空間上の小指の位置をまず決めるというつもりで、手と腕全体のポジションをとってみましょう。小指の位置が先に決まると、楽器を安定させやすくなり、それぞれの指を動かしやすくなります。

今回は、楽器の例を出してみましたが、そのほかの道具、たとえば包丁や、はさみを持つとき、重いフライパンを持つとき、いろいろなときに参考にして試してみてくださいね。

わかりにくければ、ぜひレッスンでご質問ください。一緒にやってみましょう。

やりすぎを、やめていくヒントとして

アレクサンダー・テクニークの一つの特徴として、やりすぎをやめていく(undoing)、ということがあります。
上に書いたようなことも、やりすぎをやめていくということに、つながるのではないかな、と思っています。

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