アレクサンダー・テクニークにおける、実験と探求の精神と、教え方の多様性

実験と探求の精神が、アレクサンダー・テクニークの根底にある

アレクサンダー・テクニークの創始者、アレクサンダーさんは、シェイクスピアの朗誦劇をする俳優だったのですが、舞台に立つと声が出なくなることに悩まされていました。

舞台で声が出なくなったとき、最初は医者を訪ねましたが、「医学的には問題がないので、医者としてできることはない」と言われ、自分で、自分が声を出そうとするときのことを観察して、自分を実験台にして解明しようとしました。それがアレクサンダー・テクニークが生まれる最初のきっかけです。

そんなアレクサンダーさんがもっていた実験の精神は、現代のアレクサンダー・テクニークにも生きています。それが、アレクサンダー・テクニーク教師達の少しづつ違うユニークな教え方にもつながっています。私自身が、生徒さんと会うときにも、その探求の精神をもって、一緒に探求していくことを大事にしていきます。

アレクサンダー・テクニーク教師は「体の専門家」とはちょっと違うと私は考えています。むしろ、心身について探求するときの「伴走者」だと思っています。教師だからといって何でも知っているわけではなく、知らないことはたくさんあります。たとえば教えていると、自分の知らない楽器を演奏する生徒さん、やったことのないスポーツをやる生徒さん、やったことはあっても、自分よりずっとずっと上手にできる生徒さんなどがたくさんいらっしゃいます。

でも実は、教師が「知らない」ということがデメリットにはならないのがアレクサンダー・テクニークなのです。それは、未知なことにどうアプローチするかを訓練しているのがアレクサンダー・テクニークの実践者であり、教師だからです。「それをあなたはどんなふうにやりたいのですか?」というような問いからはじめ、いろいろなことを生徒さんに質問して対話しながら、生徒さんの探求に併走するべく、レッスンを進めていきます。言葉を使わず、非言語で対話しているようなレッスンになることもあります。

1600時間の学びが基本とされている、アレクサンダー・テクニークの教師養成トレーニングは、その大部分の時間を、知識を増やすことではなく、自分の体験を深め、研ぎ澄ますことの訓練に費やしてきています。

「もうわかっていること」だと思っていることを、新鮮に見直してみる、そこに発見があります。アレクサンダー・テクニークのレッスンで、専門的なことだけでなく、当たり前の日常動作をやることにも時間をかけるのには、そんな意味があります。


アレクサンダー・テクニークは先生によって教え方が違いますか?

まず、私が学んできた先生方の話をしましょう。最初についた先生は、寝た姿勢でのライダウンワークと、座ったり立ったりするワークだけをやる先生でした。アレクサンダーさん自身の教え方に近い教え方です。
最初は、何が起こっているのかわかりませんでしたが、少しづつ、体の意識が研ぎ澄まされてきて、呼吸や発声が楽になってきました。また精神的にも、余裕ができ、自分に自信が持てるようになってきました。

その後に学んだ先生は、小グループで、日常生活や、演奏などに応用するレッスンを行う先生でした。これは、自分自身のことだけでなく、ほかの人がワークを受けて、変わっていくのを見るのが面白く、心を打たれることが多かったです。

私ははじめの数年間、伝統的なレッスンと、グループのワークを並行して受けていました。教師養成トレーニングに入ってからは、さらにいろいろな先生に学ぶことができました。動きのゲームや遊びを使って教える、ダンサー出身の先生もいました。遊びのようで、知らず知らずのうちに身に着いてくることが多くあり、おもしろかったです。また卒業後に学びに行った先生は、心理面を、体をとおして見ていくのを助けてくれることが得意でした。教師によっては、触れることを使わないで教える教師もいました。

私自身は、今まで習ってきたことで自分に役に立ったことをできるだけ全部取り入れて教えています。ですが、先生方とは違う人間なので、同じように教えたくても教えられません。自然と、自分ならではの教え方になっています。

アレクサンダー・テクニークは、知識や技術だけではなく、「自分自身の使い方」のワークなので、その人のあり方とワークが、どうしても結びついてしまいます。また、その教師自身が、長年悩んできて解決したことがワークの色合いに影響することも多いかもしれません。

そんななかでアレクサンダー・テクニークの共通した原理には、以下のようなことがあるでしょうか。(同じことを言うのでも、違う言葉を使っている場合もあると思いますが…)。

・抑制(やりすぎをやめていくことなど)
・部分ではなく全体のつながりを見る
・心身をひとつのものとして見る
・直接的に問題解決を目指すのではなく、間接的なアプローチ
・首の自由さと、プライマリー・コントロール
・自分自身の使い方

また、どの原理をメインにして教えるかも、教師によって、色合いが異なると思います。

まずは自分に合った教師から学びはじめ、だんだん身についてきて、もっと興味が出てきたら、さらにアレクサンダー・テクニークの世界の多様性に触れてみるのもいいですね。

 

Share Button