2歳の男の子と言葉

先週のはじめ、EYEBODYという、アレクサンダー・テクニークと見ることについての合宿セミナーに参加しに京都に行ってきました。

とても学びが多かったので、そのことについて書きたいのですが、盛りだくさんだったので、何から書いたらよいのか迷います。セミナーやワークショップに参加するといつもそうなのですが。。もう少し消化して、おいおい書きたいと思います。

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さて、そのとき、私は友人の家に泊めてもらっていました。
友人の家には2歳のH君という男の子がいるのですが、その男の子としばらく一緒にいたのが、とても楽しかったし、おもしろかったのです。

H君はみかんが大好きなのです。
たまたま私は小田原のみかんをおみやげに持って行っていたのですが、それを朝、棚の上に見つけて、
「あ、みかん!」と指さします。
そして
「みかん食べる!」「みかん食べる!」「みかん食べる!」

お母さんにもらって、ひとつ食べました。

それからしばらくして、お昼前、
みかんのことを思い出して、

「みかん食べる!」「みかん食べる!」「みかん食べる!」

「お昼ご飯の前だからだめだよ。ご飯食べ終わったら食べよう」
とお母さんとお父さんに言われたのだけれど、

「みかん食べる!」「みかん食べる!」「みかん食べる!」
「みかん食べる!」「みかん食べる!」「みかん食べる!」
「みかん食べる!」「みかん食べる!」「みかん食べる!」

と、泣きながら訴えています。
お父さんが抱いてあやしても、「みかん食べる!」と、言い続けて止まりません。
お母さんは根負けして、「じゃあ、一房だけあげよう」

それを聞いたとたん、H君、
お昼ごはんが並んだ食卓の自分の椅子に座り、
すでに並んだお昼ご飯の、ご飯とおかずとスープのお皿を全部、向こう側にどけて、みかんのためにクリアーなスペースをつくります。

手の空いていた私がみかんを剥いて、一房、H君にあげました。
H君、おいしそうに食べて、満足げ。
そしてすぐに、いましがた向こうにどけた、ご飯とおかずとスープのお皿を手前に戻して、機嫌よくご飯を食べ始めました。

一房のみかんをとても大切に食べて満足した様子が、すてきでした。

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H君は、自分の行動を全部、言葉にします。
「みかん食べる」「みかん食べてる」「みかん食べた」
という感じに。。

(あ、みかんのときは、食べるのに熱中してたから、食べながら「みかん食べてる」とは言わなかったかな? 本を読んでいて、本の中の登場人物のことを「みかん食べてる」「おふろ入ってる」とかは、言っていました。)

学校で外国語を習うときには、まずは現在形しか習わず、それから過去形や進行形(「みかん食べてる)や、完了形(みかん食べた)という時制を習うけれど、
生の言葉はそうではないのだなあ、ということが、よくわかります。

ちなみにGDM(Graded Direct Method)という言語の学習法を、私は少し勉強したことがあるのですが、そのやり方では、このH君みたいに、ひとつの単語の進行形や過去形も一緒に学ぶというやり方でした。生の覚え方に即しているのだなあ。

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ただ、未来のことはH君は、まだよくわからないみたいでした。

H君は電車も大好きなので、
私が新幹線で帰るのを見送りついでに、お母さんと一緒に新幹線を見に京都駅まで行こうということになりました。

お母さんが晩御飯のときH君に
「あした新幹線見に行こうか?」
と言ったらそれはそれは大喜び!
ひっくり返って喜んでいます。

でも「あした」というのはよくわからないらしく、今すぐ行くつもりになっちゃって、
「新幹線見に行く」「新幹線見に行く」「新幹線見に行く」
「新幹線見に行く」「新幹線見に行く」「新幹線見に行く」

私たちが動こうとしないので、だんだん、泣きべそに変わってきてしまいました。

「あした見に行こうね。今日寝て、あした起きたら行こうね」
と、私が言ったら、

「寝る!」

と、今すぐ寝ると言うのです。

今すぐ寝なくても、お風呂入ってから寝たんでも十分間に合うよ、あしたはちゃんと来るからね。

と言っても、まだわからないんだろうな。

でもなんとか、お風呂も入って、次の日、新幹線のホームまで見送りに来てくれたH君とお母さんのNちゃんでした。

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Hくん、自己主張がはっきりしているなあと思われるかもしれないし、それもたしかにそうなんだけれど、それだけではなく、言葉を思い出したら、行動とつなげずにはおちつかない年齢なのかな、と、思いました。

こんなに言葉と行動が一致していたときが、私にもあったのかなあ、と思うと、不思議な気もするし、なんだか、いいなあ、と思います。

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もうひとつ不思議だったこと。

最初は人見知りして、お母さんの後ろに隠れていたH君が慣れてくると私の名前を「ゆりこちゃん」と呼んでくれるようになりました。

ただ、お母さんのNちゃんも、お父さんも、私のことは「ゆりちゃん」と呼ぶのです。
「ゆりこちゃん」と呼ぶ人は少ない。
どこで、覚えたのかな?

あとで相方にその話をしたら、
「H君にあなたが『ゆりこです』と自己紹介したんじゃない?」
ああ、たしかにそうだった。
でも、その自己紹介のときには、本人は人見知りして、すぐおかあちゃんの後ろに隠れてしまっていたけど。。

「でもきっと、本人が言ったことを、いちばん覚えてるんだよ」

なるほどそうかもね。

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