「一番実感するのは、ステージで緊張したときに冷静になれるようになったこと」

「一番実感するのは、ステージで緊張したときに冷静になれるようになったことです。今までも、緊張しても「やりきる」ことはできたんですけど、冷静にやりきるというより、ノリでいっちゃう感じだったんです。でも今は、「こういうふうな状態になっているけど体とは別だ」、というふうに冷静に見えて、コントロールできるようになった。それを本番のときに実感します。

本番のときにまわりの状況に影響されてしまわずに、自分のなかに居たまま、しっかりパフォーマンスできるようになった感じです。冷静になったのは、やる気がないとかそういうことじゃなくて、ちゃんと「コントロールできている」というのを感じます。そもそも「コントロールできるんだ」ということを知りました。

たとえば、以前は、自分の歌のパフォーマンスを後で動画で見たときに「こんなガチャガチャと動いてたんだ」と思うことがあったんですけど、今は無駄なく動けるようになってきて、そのときに「ステージのうえで大きく見えた」と言われたんです。大きく動いているわけでもないのに「大きく見えた」と言われたから、なるほど、と思いました。がちゃがちゃしなくていい、という自分の使い方を教えてもらったなと思います。

あと、どこかに力が入っているときに「力が入っているけれどこれはどうにかできる」ということもわかった。以前は若さもあって、そのままでもガッといけたかもしれないんだけど。今はガッといくと良い方向に出ないので、体の使い方というのは必要なことだなと。

でもこれを人に言うのはほんと難しくて、体で感じたことを言葉で言うのは難しい。でも先生はそれを言葉でわかりやすく言ってくれるので、それに助けられています。

「27歳くらいで声は出なくなる、楽器も、上達するには何歳までにやらないと…」というようなことを誰かに言われたことがあったんですけど、それは超えられると思いました。楽器をただ弾くだけでなく、体の使い方も含めてできるようになれば、逆に今まで以上にできるようになるんだということがわかりました。楽器をどう上手に演奏するかということの前に、体があるんだなということがわかりました。

もっと早くアレクサンダー・テクニークに出会っていたらと。楽器やる人にだけじゃなく、どんな人にでもすごく大事なことだなと思います。

楽器に関しては、長い時間練習できるようになりました。楽器をやっていない時間があったとしても、久しぶりに楽器を持ったときに前よりうまくなっていてびっくりしました。窮屈じゃなくなったし、弾いている途中に息が止まっちゃってる、固くなっているところがあったと思うんですけど、そういう悩みも、逆にやらない時間で解決されていたりしたんです。なので時間が空いてからの練習も楽しみになったし、毎日練習していても疲れなくなって、それはすごくびっくりしました。それで練習する時間が自ずと増えるというか…。

先生の言葉選びが丁寧で、決めつけない感じというか、「それもありだし」、というところから話をはじめてくれるので、「こうしなきゃいけないんだ」というのがなく、いろいろ質問もできるし、それが、やりやすくてありがたいです。「これはだめなのかな」と思って聞くと、「いやそれもありだし」というところから広がる感じになるので。

たとえば電車のなかで座るときも、姿勢が悪いのはだめなんじゃないかと思っていたけど、「そういうときもそういうときである」というふうに先生がおっしゃっていて、「今はそれも、選んでそうしているんだって思っていればいいです」ということだったので、たまに電車のなかでどうしても疲れてグチャッとなっていても、今だけ、と思える。で、そのままでいるとだんだんきつくなってくるので、直して、こっちのほうが楽だな、と、それを、自分のなかでちゃんと選べるようになった感じがします。先生のところに来ると、勝手に楽になったりする自分がいて、先生の教え方に助けられている気がします。

先生が言っていることをすぐに頭で理解できるわけではないんですけど、回数を重ねていくうちに体がわかってきていて、それも、あとで「生活に生かせているな」ということに気づいて実感するみたいな感じで、本当に続けることが大事だというふうに思います。いろんなところで、「これが先生が言ってたことか」ということを、あとから気づくというのが楽しくて、まずレッスンに来たら先生が言っていることを浴びるというのを意識しています。
先生が伝えてくれる言葉は、決めつけている言葉ではなく、気づかせてくれる。たとえばさっきの、自分とその「向こう側の空間を含める」とか、そういう言葉で気づかせてもらったりして、先生からの言葉によく感動します」。(談)

豊田まりさん(歌手) 21回目のアレクサンダー・テクニーク・レッスンを終えてのインタビュー。
まりさんは、歌を歌うほかに、ギター、バンジョー、バウロン(アイリッシュの太鼓)などの楽器も演奏されています。
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