本番などでの緊張(「あがり症」)について

(音大生向けに書いた文章を転載します)。

本番で緊張しやすい、あがりやすい、ということに悩んでおられる方が多くいらっしゃいます。
どんな状況で緊張しやすい、あがりやすいでしょうか?
多くの場合、緊張しやすい状況というのは、その人にとって大事な状況なのではないかと思います。

たとえばお客さんがたくさん来る本番、大事な人が見に来る舞台、尊敬する人が見に来る舞台など…。
演奏以外でも、就職活動での面接や、教育実習等の場面でも、緊張することがあると思います。

ふだんから緊張しやすいという方は、(前回も行っていただいた)「体の動きの気づきのワーク」を続けることで、体への気づきが増し、体がだんだん自由になってくるのにともなって、緊張しやすい体質も少しづつ変わってくるでしょう。
(また、「ふだんは本番と違って緊張しない」と本人は思っている場合でも、無意識的に体を固めながら演奏やそのほかのことをやる癖がある場合、そのような体を固めながら物事を行う習慣がほぐれてくると、本番で精神的に緊張したときでも体が自由に動くようになってきます)。

緊張したり、あがったりするのは、その機会をあなたがそれだけ大事だと考えているからこそです。ですから、そのテンションをアドレナリンに変えて、よいパフォーマンスの助けに変えるということも可能です。

緊張すること自体は、かならずしも悪いこととはかぎりません。

ただ、緊張することによって体や心が動かなくなってしまい、やりたいことが思うようにできなくなってしまったり、
終わった後にも心身がゆるまなくなってしまったりするのはつらいですよね。

それでもまずは、
「緊張を、追いやってしまおうとしまわない」
と意図すると、そのほうがうまくいくことがあります。

「緊張しないようにしなくっちゃ」と思うと、なおさら緊張が高まって悪循環になってしまった、という経験を持つ人もいらっしゃるのではないでしょうか?私自身にもそういう経験が多くありました。

むしろ「あ、緊張しているな」と、もう一人の自分が眺めているようなつもりで、それを変えようとしないでいると、
かえっていつのまにか少しずつ別のところに動いていったりするものです。

参考:『演奏者のためのはじめてのアレクサンダー・テクニーク』 p124~p135「あがってしまうとき①②③」

以下にやっていただきたいワークがあります。

【ワーク:本番などでの緊張(「あがり症」)について】

ノートにメモを取りながらやってみてください。
言葉より図や絵のほうが描きやすい方は、図や絵で描くのもよいでしょう。

1.自分にとって緊張しやすい状況をひとつ、具体的に思い浮かべてください。
近い将来に予定されている演奏の本番や、つい最近あったことがあれば、それを選ぶのがよいと思います。

(1)何人ぐらいの、どんな人が観客にいますか?

(2)その場所はどんな場所でしょうか? 広さ、明るさ、暗さ、床や壁の材質、雰囲気、暖かさ冷たさなどを思い浮かべてください。

2.その状況を思い浮かべたとき、自分の体はどうなっているでしょうか?
緊張が、体のどこかに表れているでしょうか?
何に気づきますか?

3.その状況を思い浮かべたとき、逆に、体のなかで意識が薄くなっている部分はありますか? 足の裏はどうでしょう? 足の裏が床に着いていることを思い出してみてください。

4.緊張しているときは、体のどこか一部分に意識やエネルギーが集まりすぎていることがよくあります。
集中しすぎたエネルギーを体全体にまんべんなく行き渡らせるようなつもりで、忘れていたところ、たとえば足先、背中、頭のうしろ、などの存在を思い出してみてください。
体を少し動かしてみるといいかもしれません。

5.呼吸の動きを思い出してみてください。人間は、静止しているときでも呼吸しているし、血流の流れや内臓のはたらきなど、見えないところで動き続けています。緊張して体を固めているときでも、見えないくらいの動きがつね
に、体の中に起こり続けているということを思い出しましょう。

6.そして、もう一度、最初の状況を思い浮かべてみてください。
頭の後頭部に視覚野がありますが、視覚野で状況を映像化するようなつもりで、想像上のステージやレッスン室などの景色を見てみてください。

7.自分がその空間の中心に居ると思ってみましょう。
自分の後ろにも空間があります。
足元には床があって、床の下には地面があります。

8.自分が演奏する曲全体を思い浮かべてみましょう。または話す内容を思い浮かべてみましょう。
出だしの音だけでなく、難しい部分だけでもなく、全体としてどういう雰囲気の曲でしょう? 全体としてどんな話でしょうか?

9. その曲について、自分なりに思い浮かぶ景色はありますか?

10.そのように全体の雰囲気を頭の中で映像化してみてから、曲を演奏してみましょう。
または自分が曲を演奏していることを想像してみましょう。
または話をしてみましょう。

―――

「緊張を、追いやってしまおうとしまわない」
そのうえで、緊張することによって、思うようにパフォーマンスができなくなった経験がある方は、
体全体に意識を向けてみたり、事前にイメージして状況を意識化してみたりすることが助けになるかもしれません。

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