この動画を見てみてください。(0:40秒くらいから)
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団と、ピアニストのマリア・ジョアン・ピリスが、モーツァルトのコンチェルトを演奏している映像の一部です。(指揮者の後日の話が間に差し挿まれています)。
この映像は、ピアニストのマリア・ジョアン・ピリスが、コンサート(公開リハーサル?)に間違った曲を準備してきていたことに、オーケストラの演奏がはじまってから気づき、頭を抱えながら「譜面を置いてきてしまった」と指揮者に訴えるのだけど、指揮者は「去年弾いたじゃないか」と言って曲を止めない。
それでマリアジョアンは、うなだれながら弾き始めるのだけど、弾くうちに思い出してきて、数小節経つと確信を持ってオーケストラと一緒に音楽を奏でるようになっています。
このあと、最後まですばらしく弾いたそうです。
こんな思いがけないことが起こるとショックを受けるけれど、そこからこんなふうに自分を立て直すことができる。
最初は、「あーなんてこと!!」という表情だけど、そこから時間が経つにつれ彼女は一瞬一瞬変化して、一瞬一瞬、「今にいる」自分をとりもどしてくる。すると、 まわりの人たちが奏でる音楽と自分を同期がとれて、自分のなかにある記憶がちゃんと出てきて、音楽とひとつになれる。
そういう、すばらしい例ですね。
動画は曲の途中で終わっているのが残念ですが、どんどん音楽の世界のなかに入って行っているのが見えるようです。
弾き始める前は、体をちょっと固くしている彼女が、一音、一音、弾くごとに、背骨が少しづつ伸びてきて体のしなやかさを取り戻しているようにも見えます。
そんな適応力、回復力(レジリエンス)がみなさんにもそなわっていることを信頼していてくださいね。
このときマリア・ジョアンは、自分をむりやり奮い立たせているようには見えません。
たとえ完璧には程遠かったとしても、「今自分ができることをやろう」と心を決めて、「今ここ」に集中しているだけのように見えます。
その結果、指揮者も「奇跡が起こった」と言うくらいの、予想以上のパフォーマンスができた。
ベストなパフォーマンスのヒントになることが、ここにあるのではないか、と思います。
投稿者プロフィール

- ATI認定アレクサンダー・テクニーク教師(教師歴25年)
国立音楽大学非常勤講師。20歳でアレクサンダー・テクニークに出会い、1600時間の養成課程を経て1999年に認定取得。その後米国ボストンのAlexander Technique Center at Cambridgeで学ぶ。野口整体、プロセス思考心理学などにも関心を持ち、学びを深めながら、「自分の心身全体を自分のものとして取り戻す」アレクサンダー・テクニークのレッスン/講座を指導している。
【主な著書】
『演奏がもっとラクになるアレクサンダー・テクニーク実践のヒント48』(ヤマハ)、
『無駄な力がぬけてラクになる介護術』(誠文堂新光社)など。
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