歩いて前に出てきて、お辞儀してーステージで人前に立つまでの動きを丁寧に見なおしてみるー本番の緊張対策の一環として

演奏(演奏以外でも人前でのプレゼンテーションやパフォーマンスなど)をはじめてから、いろいろなことが気になってしまい、「よけいなことを気にせずに演奏に集中できればいいのに」と願う方が多くいらっしゃると思います。
そういう場合、演奏しはじめてからではなく、演奏しはじめる前に自分がどうしているのかに意識を向けてみてはいかがでしょうか?

演奏しはじめてからは、音楽表現のことを考える必要がありますし、脳と体はいろいろな働きをするので忙しいことでしょう。なので、演奏しはじめる前、ステージに出ていく前、ステージに向かって歩いているときに、自分の体と、それから五感(触覚、視覚など)に意識を向けてみましょう。

過去にひっぱられたり、まだ起こっていないことを心配したりする意識から、「今、ここ」に意識を戻すの助けになります。

演奏以外のことをやる人も、自分の活動に置き換えて読んでみてください。


演奏しはじめる前に、以下のようなことを意識しながら歩いてみましょう。

歩く、見る

一歩一歩、歩いている感覚を意識します。
そのとき、床はどんなふうか。床の材質(木、カーペット、コンクリートなどなど)が靴をとおして感じられるはず。
その床をとおしてあなたは大地に支えられています(高層階に居たとしても、その建物の下には大地があります)。
大地からのサポートが、自分の中心をとおって上向きに、頭の上まで届いています。
部屋にはオーディエンスのみなさんが居て、自分自身と、そのみなさんを含んだ部屋全体の空間があります。

とくに見ようとしなくても、空間全体の情報(色あい、奥行きも)が、あなたの目を通して目の後ろの脳(視覚野)まで届いてきています

あなたも、オーディエンスも、同じ床の上にいます。同じ床を共有しています。(会場によっては段差はあるかもしれませんが、段差があっても床は続いています)。

当たり前に思えるようなこともあるかもしれませんが、当たり前のことを確認することが、助けになったりします。
友人が視覚試験を受けるとき、「床は木だ」ということを心のなかで言葉にして自分に言ったことがとても助けになったと話してくれました。

よかったら試してみてください。

お辞儀

ステージに立ったら、次はお辞儀です。

(お辞儀しない場合は、座る動きを同じようなアイデアをもってやってみましょう。座らない場合は、見えないくらい少しだけ膝を曲げてみましょう)。

お辞儀をするとき、
見えてくるものをただ受け取りつつ、
体を縮めずに、股関節で折りたたむようにお辞儀します。

体のデザインに沿って考えると、胴体を曲げるのには、ウェスト/ベルトの位置で曲げるのではなく、股関節=足の付け根で曲げると、体をどこも縮めずに前傾できます。するとその動きは、そのあとの演奏で体をいきいきと使う助けになります)。

足下の床が支えてくれていることを感じながら、お辞儀から戻ってきます。

こんなふうに意識してみることで、「お辞儀」がこれからの演奏のために体をほぐす役目をとってくれることでしょう。

座ること、楽器を構えることについては以前もやったので省略しますが、同じく、意識的に動くことで、体の余計な緊張をほぐすことになるでしょう。

座ることに関しては、動画にしてこちらにまとめてみました。

 

ここでようやく演奏です。演奏がはじまるまで、時間にしたら1分もかからないかもしれませんが、そのあいだのことを丁寧に見ておくことが、大きな違いを生むことがあるのでおもしろいです。そして、演奏がはじまるまでを丁寧に見ておくと、演奏のときは、よけいなことを考える必要がなくなり、演奏に集中できるようになります。その曲を全体としてどのように表現したいかを体全体でイメージして演奏しましょう。

家で練習するときにも上記のことを意識してみるとよいでしょう。

・今いる部屋の空間を意識する
・五感に気づく
・演奏し始める前の自分の動きを見てみる。

そして、練習のときにはオーディエンスがいなくても、イメージのなかで聴き手の存在をイメージして、どんな人に、どんなふうに届かせたいかをイメージすることに少し時間をとってから、弾き始めてみましょう。

まず自分がここにいて、聴き手がいて、自分と、聴き手が、音楽によって関わり合っている。

その関係性がどんなふうかは、そのときどきで、違うかもしれません。
そこに正解はありません。
正解はなくても、自分なりにどんなふうでありたいか、そのような関係性に意識を向けてみるのは、演奏するという全体像を自覚することになります。
それは技術的な練習と同じくらい大事です。

それを一人で練習するときから意識に含めておくことが、本番になって焦らずにすむ助けになるでしょう。

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