アレクサンダー・テクニークのレッスンで、楽に声を出せるようになりたい、と言われる方が多くいらっしゃいます。
たとえば、
・話すとき、緊張してうまく声が出ない。
・声が小さい。
・話すときの声が、どうも、つまっているようで、自分であまり気持ちよくない。
・長く話したり、人前で話すと、後で喉が痛くなる。
・歌が好きなのだけど、歌うとき気張ってしまう。スムーズに声が出ない。
・歌うときに、声が思うようにコントロールできない。
というような悩みを、話してくださいます。
声を出すことに慣れていて、あるいは、今までに発声や声楽のトレーニングを受けてきたけれど、いまひとつ納得ができるところまでいかない、という方々もおられますし、声を出すことに慣れていなくて、声を出すことに自信がない、という方々、そして、普段は大丈夫なのだけれど、特定の状況になると、声が思うように出なくなる、という方々も、いらっしゃいます。
私自身も、小さい頃から声を出すことが苦手だったので、よくわかります。
声を出すことについてはアレクサンダー・テクニークはとても助けになりました。
レッスンで、直接的に声を出すことをやらなくても、声に変化が起こることは多いです。私自身も20代のとき、最初にアレクサンダー・テクニークのレッスンを受けはじめた頃、それにはびっくりしました。立ったり座ったりするレッスンをしただけなのに、その後、人と話をする自分の声がすごくスムーズに出ていて驚いたことがあります。
でもレッスンの中で実際にやると、やっぱりわかりやすいので、直接、レッスンで声を出してもらうことも、うちではやります。
「アー」と発声する、歌を歌う、話をする、本を読んだりセリフを読む、など、状況に応じていろんなことをやります。
では、声を出すときの、呼吸の方向性を見てみましょう。
声を出すというのは、口や喉だけではなく、全身の動きです。
声を出そうとすると、その衝動が体に伝わって、肺の空気を上向きに押し上げ、運び上げようようとする動きが起こります。肺の中の空気を、肺の下の横隔膜やさらにその下の筋膜、筋肉~骨盤底の筋肉も総動員して、ポンプのように上向きに運び上げる動きが、自然に起こってきます。
声を出す動きは、上向きの動きなのです。
胴体の一番下から、ダイナミックな上向きの動きが起こってきます。
そして肺から出た空気は首の前面をとおって、声帯をふるわせ、さらに上に行きます。
あごの中に来ると、けっこう広さがあります。
口元だけでなく、頬骨も、あごの骨の一部です。左右の頬骨~鼻のあたりまで、口の中のスペースはひろがっているのです。その広いスペース全体に空気は届いて、鼻の高さぐらいにある、上あごの天井まで届いて、そこから前に出て行きます。
口をあけると、下あごは頬骨から下に下がりますが、上あごの天井の高さは変わりません。
口を大きくあけて声を出すと、上あごの天井から下まで立体的なスペースから、空気が外に出て行きます。
声になった空気が、あなたが届けたいと意図する方向に、届いていきます。
話しかけたい相手に向けてだったり、場の全体に向けてだったり、そのときどきの目指すところに届いていきます。
声を出すというのは、直接的には、呼吸が声帯をふるわせるという動きですが、それが起こるための動き全体を考えてみると、なんともダイナミックな動きです。
体のなかを、まず下から上に動いてきて、それから外に前方へ、そしてあらゆる方向へと出ていきます。
声がうまく出せないという人は、声を出そうとするときに、気づかず何かをやりすぎていることが多いです。
やりすぎをやめることで、声を出そうという衝動に体が呼応する動きを邪魔しなくなれば、楽に声が出せるようになることが多いです。
でも、ただ、「やりすぎていたので、それをやめよう」と思うだけでは、難しいかもしれません。
そんなとき、 声を出すという動き全体のイメージをもってみると、助けになるかもしれません。
動きの方向性を意識してみると、何をやりすぎているかにも気づきやすくなり、やりすぎをやめることもやりやすくなります。(何をやりすぎているかは、いろいろなケースがあり、人によってさまざまです)。
あるいはもう、そういうことを特に意識しなくても、すでに声が楽に出ているかもしれません。
声についても、もっといろいろ書けそうですが、今日はこのへんで。
(おまけ) よく、大きい声が出ないのは、安定した声が出ないのは、腹筋が使えていないからだ、と言われますが、腹筋を使おうと、お腹の一部をへこませるだけでは、あまり呼吸の動きの助けにはなりません。そんなときは実は腹筋も使えていないのです。逆に、余分な力をいれて固めているだけになってしまっています。そうするかわりに、上向き方向を意識して、体にまかせると、結果的に腹筋も、うまく使えるようになっていることが多いです。
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