力を使っても疲れないナイフワーク(グリーンウッドワークとアレクサンダー・テクニークのコラボ・セッション)

長年、アレクサンダー・テクニークの翻訳・通訳をしてくれているパートナーの松代尚子さんは、庭木の剪定木などを、すべて手作業で削って、スプーンや椅子などを作る、グリーンウッドワークといわれる昔ながらの木工をやっています。https://guritogreen.com/

このグリーンウッドワークの作業のなかで、ナイフや斧を使うとき、アレクサンダー・テクニークを使って行うと、とてもやりやすい、ということで、アレクサンダー・テクニークとグリーンウッドワークの、コラボセッションをすることにしました。

その、記念すべきはじめての生徒さんが、長年私のレッスンにいらして、アレクサンダー・テクニークを続けていらっしゃる、(ち)さん。

まずは座るところを、アレクサンダー・テクニークのレッスンでやるように、やってみます。
座るときに、胴体を縮めて座るか、伸びやかな胴体で座るかで、そのあとの作業が変わってきます。
胴体が自由で広々としたままでいると、手や腕によけいな負担がかからなくなるのです。

さて、新しいことをはじめるとき、
「よし、やってやろう!」と思い、その瞬間、前のめりになる、
というのは、よくあることだと思います。

そこで、ちょっと間を取って、自分全体を思い出し、
そこからはじめます。
(このときに私はハンズオンをして、それをサポートします)。

いえ、姿勢として前のめりになること自体は、何も悪いことではありません。それは作業をするのに必要な姿勢なこともあると思います。ただ、その前傾姿勢になるときに「体をぎゅっと固めながら」前のめりになっていたりする。
それは無意識で起こっていることなのだけれど、
その無意識で固めているということが、これからやろうとしていることを、少しばかり邪魔してしまうかもしれません。

それで、そのとき、ちょっと間を取って、自分全体を思い出す。
すると、見た目には変わっていなくても、あり方の質が、変わります。
固くなっていない、しなやかな心身を使って、作業をはじめることができるのです。

こんなふうに、アレクサンダー・テクニークの考え方を応用してみます。


さて、一般的な木工は、乾かした材を使うことが多いのですが、グリーンウッドワークでは、あまり乾ききっていない、まだ少し柔らかい木を使い、木目に沿って、手作業で削っていきます。

木目に沿ってナイフを使うときの、ナイフ使いの方法をいくつか、先生のなおこさんがやって見せてくれ、それを真似してやってみます。
削りたい方向や形に合うようなナイフの使い方のバリエーションがいくつかあるのです。なおこさんが、英国やスウェーデンの先生から直接習った、大変合理的な方法。私もやるたびに、ほう、そうか!と、木とナイフが出会う気持ちよさを感じます。

そのとき、木目に沿って、ナイフの刃を動かしていきたい方向に、腕全体はどんなふうに、その動きについていくのだろう?
それを見ていきます。
ここも、アレクサンダー・テクニークの出番です。

多くの人が、ナイフを使うとき、手首から先だけに意識が集中しがちではないでしょうか?
そうすると、手首や、掌を固めてしまうことになりやすく、後になって、手首や掌を痛めてしまう人が多くいらっしゃいます。また、腕や肘を痛めてしまう人や、腰を痛める人もいます。

逆に、腕全体を使ってナイフを使うと、手首や掌も傷めず、筋肉痛にもなりにくいです。

そのようにして、途中休憩をはさみ5時間くらいナイフと木に向かい、(ち)さんはすてきなバターナイフを作って、帰って行かれました。(最後のしあげはお家で)。

翌日の、(ち)さんからのご報告メール

昨日はグリーンウッドワークとアレクサンダー・テクニークの会をどうもありがとうございました。

とても素敵なセンダンと桜の木を用意してくださって、シンプルな道具だけで木を削ったり、手触り、音、香りに包まれて、とても心地よかったです。
人と、木と、削った木と、鳥の声もしていて、音楽もあって、ほっこりと楽しかったです。

そして、なれない動作を何時間も続け、けっこう力も使ったのに、今朝は全くどこも痛くないです!やっぱり驚きです!」

こちらこそ、楽しい時間でした。(2023.4.16記)

アレクサンダー・テクニークとグリーンウッドワークのセッションについてはこちらへ

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