整理しないまま、ペンの動きにまかせて手書きで文章を書いてみる

アレクサンダー・テクニークに限定せず、セルフケアに役立つワークを紹介します。

「さまざまなことで心理状態が揺らいでしまい、演奏に影響してしまいます。演奏するときに、できれば、そういうことをリセットしたいのですが…」という方などに…。

【整理しないまま、ペンの動きにまかせて手書きで文章を書いてみる】という方法

心理状態を、演奏や、そのほか、やりたいことや、やるべきことをするのにちょうどよいくらいに落ち着かせるために、今までに紹介した、セミスパインや、気づきをもった体の動きのワークなどによって、体の緊張をゆるめることが大変役に立ちます。
それとともに、「書く」ことが役に立つことがあります。

ここで紹介するのは、「整理しないまま、ペンの動きにまかせてとりあえず書く」ことです。

タブレットやスマホやPCで書くより、アナログに、紙とペンか鉛筆で書くのがおすすめです。

書くといっても、目標や計画などポジティブなことだけを書くのではなく、
分析するなど知的な作業としてだけでもなく、
弱音、愚痴、不満などを含めた感情や、頭のなかでグルグルしているような考えを、とりあえず外に出してみるために書く。
生産的な考えではないと思っても、人に言うのは恥ずかしいと思ってしまうようなことでも、自分の中に溜まってしまわないために、自分だけのために書いてみる。

書くことによって、自分の内にある思いを外に出すと、新しい考えや、意欲が自分のなかに入ってくる余地が生まれるようです。

「外に出す」方法には、ほかに「人に話して聞いてもらったり、読んでもらったりする」という方法もありますし、それももちろん大変役に立ちますが、
ときには、ひとに話せるほどにまとまった言葉になっていないような考えや感情にとらわれてしまっているということも、あって不思議ではありません。または、すでに人に話して、頭ではどうしたらよいかもわかっているのだけど、気持ちが納得できていない、とか、体が動かない、というようなこともあるかもしれません。

そんなときには、無理に考えを整理しようとせず、無理に急いで活動に入ろうとせず、その前に、言葉にならないような思いとか、言葉にしたらくだらなすぎるような思いも、あえて文字にして書いてみる。

人に見せない自分が自由に書けるためのノートを一冊用意して、まず今日の日付だけ書いて、あとは何でもいいので書き始めてみましょう。

やる気が出ないときには、悩みごとがあったりするようなときはとくに、すぐに解決策を得ようとする前に、自分の感情と一緒にいつつ、書いてみてください。

悲しかったり腹が立ったり、さびしかったりする感情も、自分の内臓のあたりにあるままで、そういう感情をどこかに追いやろうとしないでみてみましょう。
感情というのは、追いやろうとしないときのほうが、時間とともに自然に変化していきます。
演奏するときにも、感情をおいやらずに、ネガティブな感情であってもそういう感情と一緒にいて、演奏してみるとどうでしょうか?

からだに気づきがあって、体を固めていないときだと、さまざまな感情を抱えながらいることができると思います。それは、人間性の豊かさにもつながるのではないでしょうか。

私は、いまひとつやる気が出なくて、何も書くことも思い浮かばないようなとき、ノートに向かって、
「さっき食べたおかずはいまひとつおいしくなかった」とか、そんなようなことから書き始めて、しばらく書いていると、いつのまにかもう少し本質的な、実は気になっていたことが言葉になってきたりします。

書くことによって、頭がすっきりするし、
愚痴がインスピレーションに変わるかもしれません。
「〇〇が、こんなに嫌なのは、私はこういうことをやりたかったからだ」ということに気づくかもしれません。
それで嫌なことがなくなるわけではないけれど、「嫌だ」と、はっきり自覚することによって、嫌なこととつきあいやすくなるかもしれません。

はっきりした洞察は特になくても、書いた後、なぜかやるべきことに取り掛かりやすくなったりすることもあります。

毎朝、朝起きたら15分くらい、書いてみる。それで一日をはじめてみましょう。

これは、ジュリア・キャメロン著 ”Artist Way” (邦題:『ずっとやりたかったことを、やりなさい』) という本のなかに書かれている「モーニング・ページ」という方法から取りました。この本にはほかにも、さまざまな分野のアーティスト、そして、アーティストとして挫折しかかっているけどあきらめきれないような人が、創造性を取り戻すために役に立つワークとインスピレーションがたくさん載っています。

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