今日の本番、たのしんできてくださいね。
もう本番前になったら、体のことなどは、あまり考えなくていいので、今、ここにいる自分の現在地と、自分が何をしようとしているかと、一緒に伴奏してくれるパートナーの存在を確認して、今、ここにいて、やるべきことをやる、それだけを考えていたらいいです。
大事な舞台で緊張するのはあたりまえだし、そもそも緊張は悪いものではないのです。緊張がアドレナリンになれば、もってる力を発揮できるのだから。
自分が緊張していることに気づいたら、それをただ見てほおっておく。それで、演奏がはじまったら、自分の演奏に集中したらいい。
ただ、自分はそもそもその曲のどこが好きか、それを演奏前に思い出しておくのは、いいかもしれない。でも、ただ、思うだけでいい。それを無理に作り出そうとしなくていいです。
「うまく見せよう」とか、「どう思われるか?」とか、そういうことも考えなくていい。聞いてくれるお客さんのことを思うことは、よいことだけど、そのお客さんにどう思われるか?ということまで考えると、考えすぎかもしれません。それは、こちらでコントロールできることではないのだから。
ああ、お客さんが聞いてくれてるんだな、と思って、あとは自分が今できることに集中してやるだけでいい。上手くやろうとしなくていいです。
そのほうが、結果的には、持ってる力を出しきれて、うまくいくと思いますよ。
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上記は、アレクサンダー・テクニークのレッスンに来られた音楽家の生徒さんが、演奏の”本番”を前にして、不安がっていたので、送ったメッセージです。
音楽家やパフォーマーの方はもちろんそうですが、それにかぎらず、たまに人前で話す機会があるという方でも、
「人前で、大事な舞台で緊張してしまって、普段どおりのパフォーマンスができなくて悩んでいます」
という方は多いと思います。
私自身にとっても長いこと、かなり切実な悩みでした。
ただ楽しく音楽を楽しんだり、会話を楽しんだりしたいのに、緊張のせいでそれができない、という悩みがあったのです。
そこであらためて、この問題に対する対策を考えてみましょう。
まず、
1)緊張している自分に反応しない。
2)特別な状況でない、ふだんの状況での、からだの緊張パターンに気づき、少しづつそれを手放す。
と、大まかに二つの方向の考え方が、役に立つのではと思います。
1)緊張している自分に反応しない。
「緊張する=いけない」
と思っている人は多いと思うのですが、緊張することは、それ自体は悪いことではないのです。
緊張するのは、今やろうとしていることがあなたにとって大事なことだからです。それで、注意力を注ぎ込む必要があると、脳が目覚めて、指令を出しているのです。それによって、アドレナリンが分泌し、注意力は向上するのです。その注意力をパフォーマンスに向ければ、パフォーマンスの向上に役立てることができます。
では、それなのになぜ、緊張してうまくいかなくなってしまうのでしょうか?
「あ、また緊張してしまった。顔が赤くなってるし、こわばっている!手も固まってしまってうまく動かせそうにない。これじゃダメだ!どうにかしなくちゃ!」
緊張している自分に気づいたとき、こんなふうに、あわててしまう。。
心当たりがある人は少なくないと思います。
アレクサンダー・テクニークでは、「刺激に対してすぐに反応しない」ことが大事だと、よく言います。「刺激」というと、通常、外から来た刺激をさすことが多いと思いますが、自分の中で起こっている「刺激」に、自分が反応している場面も、実はたくさんあります。
自分の中で起こっている「緊張」とか、それによって起こる、体のこわばり、などに気づいても、それに反応しない、ということを、やってみられるでしょうか。
「どうにかしなくちゃ」「修正しなくちゃ」「リラックスしなくちゃ」とすぐに考えるのを、やめてみましょう。
そもそも緊張しているときには注意力も高まっているので、ふだんなら気にしないような些細なレベルの変化にも敏感になっています。なのでそれは、客観的に見れば気にするほどの「緊張」レベルではない場合も多いと思います。自分が反応しすぎさえしなければ、全然大丈夫な場合が、案外多いと思います。
自分の緊張反応に気づいても、それにさらに反応の上塗りをせず、落ち着いて見守って、やるべきことに集中しましょう。今、あなたはここにいて、これから何をしたいのか、緊張してもそこから離れずにいること。そうすると、自分の緊張反応も変化していきます。あせらないで大丈夫です。
2)ふだんの状況での、からだの緊張パターンに気づき、ふだんから、そこから抜けやすくなっておく。
誰にでも、特に問題なく日常を過ごしているときでも、微細なレベルで体を固める癖があります。こういう、ふだんなら微細なレベルで体を固める癖が、その人にとって難しい状況で緊張したときに、強調されて現れてくるのです。
緊張したり、体を固める癖があること自体は悪いことではありません。緊張しても、体を固めても、そこからまたゆるむことができればよいのです。それには、気づきをもつことが、ポイントです。
たとえば実験です。
握りこぶしを作って、思い切り握ってみてください。
その握りこぶしをゆるめてみてください。
今やっていただいたような、手で作る握りこぶしと同じように、私たちは体全体、あるいは体のどこかをぎゅっと収縮させたり、収縮させるのをやめたりしています。そしてそれには無意識なことが多いのですが、実は握りこぶしと同じように、握ることができれば、握るのをやめることもできます。
たとえば首を固めること、脇を固めすぎて肋骨の動きと肺の動きを制限してしまうこと、骨盤を固めることなど、自分の固める癖を知って、そこから抜けるやり方を学ぶと、難しい場での自分のコントロールが、やりやすくなります。
ただ、癖を知り、それを解きほどいていくことは、時間をかけてゆっくりやるつもりでやるのがお勧めです。急いでしまうと、体の位置を変えるだけで終始してしまい、緊張パターンは変わらない、ということになってしまうこともあります。どっしり構えて取り組むことがお勧めです。それが、結果的には早道です。
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