脱力について

「脱力(リラックス)」がうまくできないという方がいます。
楽器演奏などで余分な力が入ってしまうといいます。
それで、力を抜こう、抜こう、と思うのだけど抜けないといいます。

力を抜くことって、「抜こう、抜こう」とがんばったから抜けるものではないのが難しいですよね。そう思うとかえって力が入ってしまいます。

力を「抜こう、抜こう」としているときに人がよくやることは、体に重力方向に重さをかけて、重くすることです。
「力を抜く」というのが、「だらり」と垂れ下がるイメージになっている場合が多いのですね。

腕を持ち上げられて、離したときにすぐに垂れ下がるのが、「脱力できている」と思われていることも多いようです。
でも、それがうまくできるようになったとして、演奏その他のアクティビティに役に立つでしょうか?

すべての力が抜けたら、手には何も持てないし、何もできなくなってしまいます。

楽器であれば、楽器を持っているためにまず力が必要だし、弓を動かしたり、手を動かすことにも力が必要です。呼吸の動きにも力が必要です。

「脱力」を文字通りに意識しすぎると、力を使いながら、力を抜こうとしていて、混乱してしまう場合があると思います。
必要な力と、不必要な力を分けて考えるといいと思います。

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「余分な力が入ってしまう」というときに起こっていることとして、体の力を抜こうとしすぎて、体がだらりと重くなってしまっているために、自分の体がうまく支えられなくなってしまっている場合があるように思います。そして、腕や肩などが自分の体全体のサポートをするという余分な仕事をしなければならず、本来の、動きをつくる仕事ができなくなってしまっているのです。

では自分の体を支えるために何が必要なのでしょう。
「支える」といっても、力でがんばって支える必要はありません。
まずは体のどこかが地面とコンタクトをとっていて、地面に支えられていることを思ってみてください。
そして、胴体を重力方向に押し下げて圧迫するのとは逆に、上向き方向を思い、胴体を長く広く使う、と思ってみてください。

この意味を知るためには、まず、仰向けに寝て、胴体の長さ広さを味わってみるとよいです。
仰向けで、胴体全体を重力にサポートされている状態でしばらくいると、最初はどこか縮めたり、固めていたところがあったとしても、しだいに、余分に圧迫したり、固めていたところがだんだんゆるんで開いてきて、もともとのあなたの体の大きさ、長さ広さを取り戻してきます。

ゆるめようとしなくてよいです。体が余分な緊張を手放して、自然にゆるんでくるのに任せればよいです。
最初はあまり変化を感じないかもしれませんが、それでよいです。

できれば膝を立てて仰向けになると、胴体~骨盤の底までの長さ広さがより、意識しやすいと思います。
(この姿勢を、”セミスパイン”といいます。)
これは、座る姿勢を90℃回転させたような姿勢でもありますね。

そう、胴体というのは、ウエストのところで終わってはおらず、骨盤の底、足のつけねのところまであるのです。
(膝を立てるのがしんどい方は、椅子などの上に膝から先を置いてもいいですね)。

しばらくその姿勢でいてから、起き上がってみてください。
立ち上がったときに、”いつも”の立つ姿勢に戻るのではなく、取り戻った背骨の長さを生かして立っていることを思うと、ふだんより視線が高く感じられるかもしれません。

寝ているときの、地面と広い範囲で直接コンタクトをもっている姿勢から、起きて地面と垂直になって、立っているときや座っているときも、このような長さ広さをうまく使えればよいと思います。

そうやって演奏や、いろいろなアクティビティをしてみると、演奏も、ほかのことも、違ってくると思います。

重力の方向だけでなく、上向き方向があり、左右の幅の方向もあり、さらには前後の幅もあります。あらゆる方向に広がりがあります。
でも、まずは上向き方向を思うことからはじめてみるとよいと思います。

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