重い思いを手放して荷物を持つ

アレクサンダー・テクニークの日常への応用編 です。

先日のレッスンで生徒さんが言うには、
「アレクサンダー・テクニークをはじめて、歩くことがずいぶん楽になったのですが、リュックを背負って歩くと、やっぱり腰に来るんです」とのことです。そこで、リュックを背負うレッスンをすることにしました。

まず、いつものようにリュックを背負ってもらいます。
何に気づくでしょうか?

もう一度、リュックを床に置き、背負うまでの動きをもう一度やってもらいます。

まず、床に置いてある荷物を見て、それを手に取るためにかがみます。

手だけで仕事をしようとして、首を固めていないでしょうか?

もう一度、首の楽さを思い出し、背骨の長さを思い出し、股関節の自由さを思い出し、かがみます。
それに手が軽やかについていきます。

手がリュックに届いたら、手の力だけでリュックを持ち上げるかわりに、
首の楽さと、背骨の長さを思い出し、体全体を起こしたら、手のなかのリュックもついてきます。

そのリュックを後ろにまわし、肩に通し、さらに反対側の肩に通します。
その動きのあいだ、もし胴体を固めているのに気づいたら、固めるのをやめます。

人形に荷物をもたせるときとは違って、人間は、腕だけではなく、胴体が動くことができるのを忘れないでくださいね。
そして、人間の胴体は板のような平面ではなく、立体であることも!
腕だけを動かしてリュックを背負うかわりに、体全体をらせんに動かして背負うと、リュックがより、フィットすると思います。

今までの、背負うまでの動き/プロセスをみていっただけで、かなり違いがあるのではないでしょうか?

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さて、リュックが背中に収まったとき、リュックを支えるために、肩を固めてがんばる必要はありません。

ここで少し”肩”の話をしましょう。
一般的に”肩”と呼んでいるのは、胴体の一番上、首を真ん中にした左と右のことを言うことが多いですよね。ここは、骨の構造でいうと、左右それぞれの、体の前面にある鎖骨と、体の背面寄りにある肩甲骨に挟まれた空間です。
”肩”というのはどちらかというと、「構造のあいだにある空間」なので、「肩だけで荷物を支えよう」とすることには、無理があるのですね。

話を戻して、
肩ひもは直接的には”肩”にかかっていますが、その”肩”というのは、広い胴体の上部にすぎず、
荷物を支えているのは胴体全体なのです。
支えるといっても、支えるために固める必要はありません。
その胴体は、左右の広がりがあるし、上下の長さがあるし、奥行きがあります。
その広がり、長さ、奥行き全体が、荷物を支えているのです。
それを、「支えよう」と固めてしまうと、胴体を縮めてしまうことになってしまうので逆効果です。

その胴体の底にはしっかりとしたベース=骨盤があり、
さらに言えば、その下には足があって地面があります。
地面があなた全体/体全体を通して荷物を支えているのです。
そして地面に支えてもらうためには、体全体は広くゆったりと使ったほうが、とおりがよいです。

いかがでしょうか?
ちょっと歩いてみてください。
普段と、何か違いがあるでしょうか?

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私自身、以前、重いリュックを背負っていて、肩凝りになって、数週間、それが抜けない日々が続いたことがありました。

そのことを、個人レッスンを受けるときのテーマにしてみました。
レッスンで気づいたのは、リュックによって後ろにひっぱられないように、体を前に持ってこようとしていたことでした。
それが私がリュックという刺激に対してやっていた反応でした。
リュックを持つことに対して先入観をもつことで、自分を固めてしまっていたのですね

自分の姿勢を形でとらえて、形としての姿勢を工夫すればうまくいくのでは?とやってみても、うまくいきませんでした。
そうです。姿勢を固定したものとして捉えると、自分を固めることになって、うまくいかないのです。

そのとき私は、すでにアレクサンダー・テクニークを長年やっていて、教えていて、そのことを頭ではよくわかっているつもりでしたが、日常レベルの習慣的な反応には根強く残っているのだなあ、ということに気づきます。

このような習慣的な反応は、私たちの多くがやっていることのようです。
床から持ち上げるときに、体を固めてから持ち上げる、というのも、リュックを持ち上げるという、これからしようとする自分の行為に対しての反応ですね。

「このリュックは重いから体を傷めないようにしないと」
たしかに重いかもしれないけれど、「重そうだ」ということへの自分の反応をいったん手放して、ニュートラルな気持ちで、ひとつひとつの動き・プロセスを大切にしながらやってみたら、どうでしょうか?
そうすることで、実際の荷物の重さや、自分のコンディションに合った動きが出てくると思います。

もしかしたら、
「重いリュックだから」と思うことで、実際以上に荷物を重くしてしまっているかもしれません。アレクサンダー・テクニークを生かして荷物を持つアクティビティをすると、「荷物が軽く感じる!」と驚かれることがよくあります。


1) 「荷物を持とう」と思う。でも、まだやらない。
2) 習慣的な反応が起こりそうになるのを観察する。その反応を「しない」。
3) 荷物を持ってみる。

↑こんな感じで、やってみてください。

私(石井ゆりこ)のアレクサンダー・テクニークのサイトはこちらです。

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