ボブ・ディラン自伝

ボブ・ディランの自伝
を読んでいる。
少し前に彼の映画も観たのだけれど、
映画もよかったけれど(ただ映画はちょっと長すぎたな)、この本は映画以上に衝撃的でした。

まずこの本は、うたうように書いている感じで、言葉の選び方や、リズムがとてもいい。
そして内容は、すごく率直なのです。

今、「オー・マーシー」という章~80年代のところ、つまりディランが40代のころを読んでいるんだけど、

「昔の自分の歌をやってくれと言われても、もうどんな気持ちで歌を書いたのかよく思い出せないし、魂をこめられない」とか、「自分は盛りをすぎたミュージシャンだ」とか言っていてスランプな感じで、「もう引退する」と決意するんだけれど、なんとかそこから抜ける、その過程が書かれていて、その内なる冒険が、不謹慎な言い方だけど、とてもエキサイティングです。

彼にとっては人が自分をどう評価しようと、それがいい評価であれ、悪い評価であれ本当には気にしていなくて、自分が歌に魂をこめられているかとか、そういうことをいつもめざしている。そして人がいくらほめようと、それを自分ができていないと感じると、音楽をやっている意味がない。そのへんがすごくはっきりしていたんだと思う。

そして自分の歌にどうやったら再び魂が宿るのか、それを見つけるやり方がすぐに見つかるわけではなくて、いろいろ失敗をくりかえすのだけれど、その間、地元のミュージシャンの演奏を観て感銘をうけたり、早朝に起きていきなりバイクで旅に出て、通りすがりの店の人と話をすることでひらめきがあったり、そういうことを大事にしている人でした。

こう書くと、私の言葉になってしまうので、うまく伝わらないと思うのだけど、興味がある人はぜひ、彼自身の言葉で読んでほしいなあと思います。

長くつづけることがえらいわけではない、やめるべきときにやめることのほうが大事なこともあるかもしれない。大切なのは、つづけるにしてもやめるにしても、その道すじで何を見て感じてきたかだなあ、なんて、思いました。

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