屈斜路コタンからのはがき

思いがけない方からはがきが届きました。
北海道の屈斜路コタンのTさんから。

Tさんにお会いしたのは10月に北海道の阿寒湖ででした。北海道でアレクサンダー・テクニックのワークショップをやったとき、北海道に来たのだからアイヌの人に会いたい、と思い、どこに行けば会えるのだろう、と調べたら、阿寒湖のアイヌコタンというところがあって、アイヌの料理が食べられるお店があったり、踊りなどを披露してたりするとのことでした。
阿寒湖ってどこ?と調べたら、仕事のある札幌とも士別とも離れた東のほうで、片道半日かかるようでしたが、一泊することにして行くことにしました。

阿寒湖は、森のなかの湖でとてもきれいなところでした。でもアイヌコタンは、いかにも観光向けという風情でした。マイクで「古式豊かなアイヌ舞踊をお楽しみください」なんて放送しちゃったりしてて、観光にしてももうちょっと違うアピールのしかたがあるんじゃないのかな、とも思ったし、ふくざつな気持ちになりました。でも踊りはすばらしかったです。一曲参加もさせていただいたのですが、ただやっぱり「お客」という役は、ちょっと居心地がわるかったな。

アイヌコタンのなかにあるお店でお昼、ユックオハウのセットを食べました。鹿肉と、季節の野菜がいっぱいのスープと、アマムという豆ごはん、とってもあったまって、おいしかったです!
ご飯もおいしかったのだけど、このお店の雰囲気が気に入りました。なんというか、見せるための観光向けというより、お店の人自身が居心地のよい空間を作ったという感じ。ブラジルなんかの音楽もかかっていたりします。コーヒーもおいしい。

売ってる本や音楽について、お店のおばちゃんに聞いてみたら、気さくな人で、いろいろ話してくれます。おばさんともっと話したくなって、夜も来てしまいました。「私はアイヌだけど、アイヌ語とか踊りとかを習いたいとは、あんまり思わない」なんて言いながら、でも踊り子の人たちに、毎日差し入れの食べ物を持っていってあげてるようでした。「アイヌのなかでも、こうやって観光で生計をたてることに、批判的なアイヌもいるけど、まあ仕事としてわりきってやってるからね。」
でも今、法律ができたけど、国が、アイヌ語や、踊りや、狩猟や採集などの生活のしかたを禁止したり、抑圧してきた歴史については教えないで、「アイヌの文化はすばらしいから広めましょう」ということだけを言うようになったのが、あんまり納得がいかない、というようなことを言われてました。

「あなた本読むの早い?」と聞かれて、「あ、私早いんですよ」と言ったら、「友達のところに私の書いた本があるから、もう在庫はないんだけど、あした発つまでに返してくれれば、宿に持っていって読んでいいよ、よかったら。」と言われて、パッと友達のうちまで行って本を持ってきてくれました。
それでお借りした本を宿に持って帰って読みました。
とてもいい本でした。『金の風に乗って』 という本です。二人のお兄さんが木彫りをやっていて、そのお兄さんたちの木彫りの美しい写真や、お母さんの刺繍の写真も載ってます。でも何よりTさん自身の今までの生きてきた歴史の話を読めたのが、美しい写真とあいまって、私にとってはよかったです。(本についてもう少し書けたらと思ったのですが、うまく書けないのでそのうちに。。)

翌朝、早いバスで帰らないといけなかったので、お店はまだ閉まってましたが、お礼のカードと本を、お店に置いてきました。

そのTさんからのはがきでした。「阿寒にいらした時は色々とおしゃべりをして楽しかったです」「我が家から200メートルほどのところに白鳥が飛来し毎日ガーガー鳴いています」「本、読んでくださってありがとうございました。」

旅先で出会った人のことは、よく思い出すのだけれど、帰ってくると日常に追われて、思い出すだけで実際に連絡をとることがなくなってしまうことが多くて寂しいのですが、こうやっておはがきをいただけたりするのは、しかもお世話になったほうの方からいただけて、なんだかとてもうれしかった。

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