樹木も人間も、環境に応じて自分を最適化させている。

もう去年の秋の話になってしまいますが、東京農大で樹木医の三戸久美子さんのお話と、アレクサンダー・テクニークのコラボ「樹木のかたちの読み解きかたとアレクサンダー・テクニーク」講座を行ったときのことを報告したいと思います。

三戸さんの「樹木のかたちの最適化」のお話、おもしろかったです。
木が、光を獲得するために自己最適化をし続けるという話。それは固定されたものではなく、ダイナミックな動きだということ。木は上に伸びていくだけでなく、置かれた環境その他によっては、横にひろがっていくものもあるし、枝をねじったり、石などのうえに乗っかったりもする。そういう「かたちの最適化」が、合理的な成長だというお話でした。

木は倒れかかった自分の体を起こすこともできるということです。

実際に散歩をしていて、そんなふうな木に出会うことがあると、そのダイナミックなたたずまいに感銘を受けますが、あらためて説明を聞いて、写真も見せてもらいながら、

「人間も同じなのではないか?」
と、私は思ったのでした。

人の姿勢としてよく、
まっすぐにしないといけないのでは?
曲がっていてはいけないのでは?
左右非対称だとよくないのではないか?
左右非対称になってしまうような行為(楽器の演奏など)をいつもしていると、いけないのではないか?
などと気にする人がいますが、そんなことはないと私は思うのです。

人間も、環境に応じてかたちの最適化が自然に起こっている。

人間の場合は木のように長い時間をかけて動くのではなく、すばやく動けるのが違いかなと思います。

人間は、瞬間瞬間に、環境に呼応して形を変えているのでは?
それが自然に起こっているのではないか?
木がやってることと同じことを人間もしているのではないかと思うのです。

そこで後半のアレクサンダー・テクニークを使ったワークの時間では、

「自分が刺激に応じてどう動くか、それを信頼をもって見てみる」
ということを心に留めて、

・床においた枝を、自分全体を意識して、少し離れたところから手に取る。

ということをし、そのときの自分を観察してもらいました。
自然に、ひざや股関節や足首の関節が曲がっていくのがわかります。

枝を手にとるとき、使っているのは手だけではなく、体全体なのだということがわかります。

それから、足の下の地面からの力を意識しながら手をあげること。

そして二人組になって、手の平の上に相手の人の手の平を載せて、ひとりが手を動かすと、手をとおしてもうひとりにはどんな動きが自然に起こるのか見てみる、というワークをやりました。

さらに、
・二人組で押し合いっこ(直接的には手で押すのだけど、実は手の力ではなく、重力の力を使っている)
・二人組で、重力の力を利用して、座る。
・葉っぱがたくさんついた重い枝を渡し合う~準備せずに受け取る。(準備したくなるのを抑制する)。

というようなことをやりました。
(葉っぱがたくさんついた重い枝は、朝一番に、農大の内田均先生が農大の校内の木を剪定して運んできてくださいました。)

人間も、刺激に応じて自分を最適化させて動ける自分を信頼できる体験を持つと、ふだんの生活のなかでも、無理せずより自由に動けるようになるのではないかと思います。

そして、木を見るときに、同時に自分のからだのことを思い、より共感を持って見られるようになるかもしれません。

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今日はもう年が明けて、冬。
今、うちに植木屋さんがいらして木を切ってくださっています。若手だけれど10年仕事されている方。
これからどんなふうに育っていくかを見ながら切ってくださいました。すっきりしたけど、全然さびしくはならず、むしろ心地よさが増しました。木の理解者の方のお仕事、すばらしいです。

アレクサンダー・テクニークlittlesoundsでは、東京と神奈川で週3日づつ個人レッスンを行っています。
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