音楽大学での授業~一年間が終わって「はじめは、心身はあまり関係ないと考えていました」

今年度も、アレクサンダー・テクニークを生かした音楽大学での授業、「音楽家のための心身論」の、前・後期あわせて一年間が終わりました。

「心身論」といっても、理論ありきではなく、15人の少人数制で体験的に学ぶ授業をしています。

ひとりひとりが演奏するにあたって、練習するとき、ステージに立つとき、または演奏以外で、教育実習に行くときや、勉強するとき、アルバイトするときなどに、さまざまな課題や困りごとに向き合うなかで、「からだと心に気づきを向ける」という視点をもってもらうべく、いろいろなことをやっています。

多くの学生が、「からだのことについてなど、今まで考えたことなかった」と言います。楽器を演奏するためには体を使っているはずなのですが、手や、指の動かし方しか考えていなかった、と伝えてくれるのです。声楽専攻の学生の場合だと、声帯や、口のことや、せいぜい腹筋ぐらいしか考えていなかった、と、伝えてくれたりします。そして、本番で緊張してしまうとか、そういうことは、体とはまた全然別の問題だと思っていたと、伝えてくれます。

「体全体」という視点、そしてメンタルと体のひとつながりに目を向けてみるということの意味を、前期・後期それぞれ14回の授業をとおして、だんだん実感してもらえ、それによって、長年の悩みに解決が見られたり、成果、成長を実感してイキイキとしてくる学生の表情を見られるのは、とても嬉しいものです。

マリンバ奏者の学生、Hさんのレポートを、許可を得てシェアさせていただきます。

「この授業を一年間受講して、私が一番変化したことは、考え方だと思います。枠にとらわれる性格で、こうなければならないと考えてしまうばかりに上手くいかなかったり、一つのことに囚われてしまって視野が狭くなってしまっていて、それが日常生活や演奏活動にも影響して悩んでいました。しかし、この授業を受講し、上手くいかない時はあせらず、一度立ち止まってみたり、ノートに今の気持ちを書き出すことで整理したりすることで、心を縛らず自由に行動できるようになりました。また、そのことにより、やみくもな練習が少なくなりました。

 

また、やらなければならないと焦ることで力が入っていたことに気がつきました。

受講初めは、心身はあまり関係がないと考えていました。しかし、考え方が変わると心身が上手く動かせたり、全身で息を自然に流すことで心もゆとりができ心身は繋がっているのだとこの授業では毎回の新たな気づきと共に感じていました。

授業で学んだことを生かして、私は必ず演奏前に自分自身の心身と向き合う時間を作るようになりました。この時間は「いつする」「何をする」など縛りを決めず、その時の気分でなるべく自然な流れにのるように行なっていました。

緊張はある程度ないと良い演奏は出来ません。なので、緊張を上手く活用したいと思っていました。しかし、緊張すると全身が冷たくなり、上手く動かすことが出来ないことが課題でした。演奏前に心身と向き合うことで、息が全体にいき身体が固まらず、音を響くようになったり、精神面的にもあせらず少しずつ自信も出てきた様に感じます。

また、その時間に何をすると縛らないことでその時の自分と向き合うことが出来ていると感じています。

授業を1年間受講してきて、初めは手先だけで演奏していたのが、前期では上半身を使える様になりました。しかし、上半身が上手く使えても下半身が自由さを邪魔してしまっていました。しかし、後期では、下半身が固まってしまって自由に動けない時は「一瞬止まる」という授業で
教わったことなどをもとに実践していました。そしたら、下半身が絡まるとこも少なくなりました。また、意識が「上半身・下半身」から「心身ともにすべて一つのもの」と考えられるようになったことで変わったのだ感じています。

枠にとらわれ、それからずれてしまうとあせり、心が良くない方へ行き、上手くいかないことが分かりました。演奏も人生も同じで常に縛って生きてきました。なにかに縛ることは少し安心できますが、縛るのではなく受け入れ、自分を責めず、次にどう生かすか考えられる生き方をし
ていきたいと思います。

また視野の広さを大切にしたいです。
肩が痛い時は、肩に視点を当てすぎず、どこから繋がっているのかなと手で触れて確かめたり、広く考えられることで見えてくるものがあると感じました。

「出来ないことがある時責めてはいけない」という考えが心に残りました。生きていると完璧にこなすということは難しく、何か上手くいかない時があると、自分を責めその後も引きずってしまいます。上手くいかなかった時こそ、責めることで逃げることをせず、向き合うことを大切にしていきたいです。

力を抜くということは、「だらん」とすると言う考えだった私が、今は本質的な力の抜き方を考えられるようになり、毎日研究しているという所まで身についてきました。授業では、他の専攻の方や身体の大きさが違う生徒が集まり、悩みや気づきを聞くことや話し合うことで気がつくことが多く、自分自身の成長の場となりました。練習時間が増えたり、質が上がったり、全身を使えたりしたことはもちろんですが、なにより心身ともに私なりに成長出来たことが毎日嬉しく、楽しかったです。

授業が終わってしまったことは、寂しいですが、これからも探求していきたいと思います。」

 

 

アレクサンダー・テクニークlittlesoundsでは、東京と神奈川で週3日づつ個人レッスンを行っています。オンラインのレッスンや少人数クラスも行っています。

音大生、音大受験生、プロやアマチュアの音楽家(クラシック、ジャズ、ポピュラー、民族音楽etc)、また、緊張やストレスとうまくつきあいたい方、首・肩凝り、頭痛、手の痛みを軽減・予防したい方などが学ばれています。

大学や専門学校等での講義や出張グループレッスン(単発・連続)なども承ります。

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