「オーディエンスをお誘いする」って?(人前に立つときの緊張や、あがりについて)

教師になる前私は、人前で歌ったり演奏したりすることについて、アレクサンダー・テクニークのレッスンでよく見てもらっていたのですが、
歌をとおしたアレクサンダー・テクニークのレッスンのなかで、

人前に立ったとき「オーディエンスをお誘いするようにしましょう」
と、いつも言われる先生がいました。

私はそれがずっと、よくわからなかったのです。

でも、きのう、音大のクラスで教えていたとき、学生とやりとりしながら、あ、そうか、と、腑に落ちたことがありました。
その学生も、人前で歌うときに緊張してしまうことに悩んでいて、
「人の視線が刺さるようです」なんて表現されていました。

それで、

部屋にいる人たちを見るとき、
目で見ているのではなくて、頭の後ろで見ていることを思い出してみましょう?
頭の後ろ(=視覚野)にただ情報が入ってきている、
それに対して、ただ受け取るだけで、何もしなくてよいのです…

私は、そんなことを学生さんに言うのと同時に、

同時に、これから歌おうとしている歌の世界も、あなたは見ている。
情景とか、歌にこめたい想いとか、そういうものを見ている。

それも、視覚野でやっていること。

その二つの世界(今この部屋にある現実の世界と、歌の世界)が、重なりあったとき、
あなたはこの部屋にいるオーディエンスを歌の世界にお誘いしているんだと思う。

それが起こっていたら、そのときは、緊張はもうないかも?

と。
自分でもはじめて言うことを言っていました。
それで、言ってから、「ああそうか」と、腑に落ちたのでした。

言いながら、自分の視覚野を思いつつ、生徒さんの頭に手を触れて…。

(前から感じていることだけれど、
「視覚野を思う」のは、
体の奥行きを思い出す助けになり、
刺激が前方にあるときでも後ろを思い出す助けにもなり、
いろいろに役立ちます)。

いろいろな先生方のアレクサンダー・テクニークのレッスンで学んだことと、アイボディのレッスンで学んだことが、自分のなかで、自分なりに、少しづつ一つになって腑に落ちてきているようです。

 

ふたこぶ食堂でのライブ photo by Xie Okajima

しかしほんとに、アレクサンダー・テクニークといっても、教える人によって違います。
私は、私が納得できるようにしか教えることはできません。
でもだからこそ、ほかの先生方の存在意義があるのと同じように、私の存在意義もあるのかもしれませんね。

投稿者プロフィール

石井 ゆりこ
石井 ゆりこ
ATI認定アレクサンダー・テクニーク教師(教師歴26年)
国立音楽大学非常勤講師。20歳でアレクサンダー・テクニークに出会い、1600時間の養成課程を経て1999年に認定取得。その後米国ボストンのAlexander Technique Center at Cambridgeで学ぶ。野口整体、プロセス思考心理学などにも関心を持ち、学びを深めながら、「自分の心身全体を自分のものとして取り戻す」アレクサンダー・テクニークのレッスン/講座を指導している。
【主な著書】
『演奏がもっとラクになるアレクサンダー・テクニーク実践のヒント48』(ヤマハ)
『無駄な力がぬけてラクになる介護術』(誠文堂新光社)など。
▶ 詳しいプロフィールはこちら