PCでのデザインワークと、アレクサンダー・テクニーク

京都でのアイボディ合宿のとき、H君という2歳の男の子がいるN家に泊まらせてもらっていた話を先日書きました。お母さんのNさんは、アレクサンダー・テクニーク仲間であると同時に、自宅でデザインの仕事もしているのですが、今回、私のレッスンを受けたい、とくに見ることについてのレッスンを受けたいと言ってくれたので、連日の3食のご飯と交換で、レッスンをしました(とてもおいしいご飯を毎日いただいていたので、交換条件としては、私のほうが、うんと得をしすぎですが)。。

デザインの仕事は締め切り前になると、根をつめてパソコンに向かわなければならず、目が相当疲れます。そのとき、ちょうど締め切りが終わった直後だったのです。そしてちょうど、その仕事の「直し」が来たので、「じゃあ、その直しをやっているところを、レッスンとしてみてもらうことはできないか?」ということになりました。

仕事の姿勢や動きをレッスン中にやってみることは、よくあるけれど、リアルで仕事をしているところをアレクサンダー・テクニークのレッスンとして人にワークをする機会は、はじめてじゃないかな? ちょっとどきどきしながら、やってみました。

パソコンの前に座って、ソフトを開いてファイルを開いて、デザインの修正をはじめます。
注意力がパソコンの画面のほうに行きます。そうするとだんだん座っている姿が微妙に、あえて言葉にするとすれば浮いてくるような風になってきます。画面に注意力を集めながらも、画面から入ってきた情報が、頭全体の奥行きを通って、そして体全体を立体的に通って、本人の骨盤や地面の方向にも来る、、、というような方向性で、無言で彼女にハンズ・オン(=手を触れる)しました。

方向性を思いながらハンズ・オンするのは、姿勢を変えるためではなく、気づきをもってもらうためなので、ハンズ・オン後も見た目はほとんど変わりません。
ハンズ・オンされながら仕事なんて、やりにくいんじゃないか、と思う方もいるかもしれませんが、形としての姿勢を変えるわけではないので、そうでもないのです。
でも、気づきを持つと、すぐに刺激に対する反応のパターンが変化するのがわかります。

画面から来る情報に対して彼女は最初、「むこう(画面の方)に行きたくなる」というような反応をしていた、ということに気づき、それを抑制します。

画面からの情報は向こうから光としてやってきて、眼球をとおして入ってきて、脳に届いて、脳が認識します。
(脳のなかで、見えたものを認識する”視覚野”は、脳の一番後ろ部分にあるのです。)

いつもの「向こうに行きたくなる」反応を抑制することができると、
そのように「情報が向こうから入ってくるのをただ受け取る」ということができます。

でも、癖は根強いので、癖の反応のほう、受け取ることのほう、を行ったりきたりしている様子でした。その間も、デザインの修正の仕事は進んでいます。
特に、単純作業でない部分、考えないといけないところにくると、とたんに「むこうに行きたくなる」ということに、彼女は気づきます。

「でも、取りに行かないで、受け取れてるときのほうが、よく見える!」
と、彼女は言います。「それに、楽!」。
デザイン修正の仕事が完成し、メールを書いて添付して、送信しました。

窓からは午後の光が差し込んでいたので、アイボディ教師、ピーターに習った、目をつぶって太陽をみる目の日光浴(サンニング)と、パーミング(手で目を覆う)、を、何回か繰り返しました。「気持ちいい!」
今日は朝から外に出ていないけれど、家のなかにいても、太陽をこうやって受け取れるのは嬉しいです!
さらに、ピーターに習った、窓の外の景色を、近くのもの~だんだん遠くのもの~そしてまた近くのもの~と、奥行きを追っていきながら見るワークをしました。外の小川を水鳥が泳いでいます。

ワークが終わったらNが抱きついてきました。
あんまり普段そんなふうにする人でもないので、内心少し驚いていると、
「Hが生まれてから、デザインの仕事はずっとこうやって続けなあかんな、という覚悟ができて、楽な分だけというわけにはいかへんな、という覚悟をしていたけど、これで、今後もやっていけそうな気がするよ」
というようなことを言ってくれました。

うーん、美しいね。

私も自分の子どもがいないことに甘えず、真剣に生きたいな、と思いましたよ。

パソコンに向かう仕事って、それも一つの肉体労働だと思う。
大変な仕事だけれど、体を壊さず元気に続けてもらいたいものです。

それからお茶を飲んでいると、取引先から、修正OKの電話がかかってきました。(*^^*)

それから保育所にいるH君を自転車を迎えに行ってきたNさんは、「いろんなものの見え方がちがったよ~」と言いながら帰ってきました。

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今回、リアルな仕事をレッスンでやる、という体験をはじめてやりましたが、リアルな刺激に反応している本人と、直接ワークできるので、すごく学びになるな、と思いました。

今までも、パソコンをみてキーボードを打つワークや、ノートに文字を書くワークをやることがありましたが、実際に納品するものをその場でやるということははじめてでした。

なので、こんなふうにやりたい方は(あるいは、ここまででなくてもいいですが)、ご自分のパソコンなどをレッスンに持ってきてください。
パソコン以外のほかの道具でもいいですよ。また、うちにあるものなら貸しますので遠慮なく言ってください。

私(石井ゆりこ)のアレクサンダー・テクニークのサイトはこちらです。

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