Qアレクサンダー・テクニークは、姿勢のワークなのですか?
最近、アレクサンダー・テクニークを姿勢の矯正法だと思って来られる方が増えてきたような気がします。
でもそうじゃないんですよね。
たしかにアレクサンダー・テクニークをやることによって姿勢が良くなることは多いけれど、それは結果に過ぎないのです。すぐに結果を得ようとして、直接的に、形としての姿勢だけを整えようとすることは、あまりよい結果につながらないと思います。
姿勢とは、”姿の勢い”と漢字で書くように、本来”勢い”だったり、動きのことを意味しているんだと思います。
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たまたま雑誌で、マラソン指導者の小出義雄さんの言葉をきのう読みました。
「呼吸の仕方、手の振り方、そしてフォーム。普通の指導者はそこを強制する。でも僕にしてみれば、どうでもいいことなの。バランスがとれればいいわけで、速くなれば自然とフォームなんて良くなる。自分の身体に合ったフォームができる。矯正したフォームだと、人間ってのはつらくなると絶対に元に戻っちゃう。手なんてぶらんぶらんでもいいんだよ。」
まさにそのとおりだと思います。
みなさんのなかにも、姿勢を矯正しようとして、つらくなって元に戻っちゃった経験をお持ちの方はいらっしゃるのではないでしょうか?
高橋尚子選手は当初、首が左に傾いて走る癖があったそうですが、小出監督は、そこだけは矯正したそうです。その矯正方法とは、
「路上で左側通行を止めて、右側を走らせたんだ。いっつも対向車に怒られてね(笑)。次第に首が起きて、外に向いていた足もまっすぐ出るようになった。ストライドが2、3センチ違ってきた。」
姿勢とか動きというのは、状況に適応しようとするなかでつちかわれていくものなのですよね。形だけ直そうとしても難しいのだと思います。
「矯正っていうのはその程度。ひとつ修正してあげればすっといろんなところが上手くかみ合うようになる。それを見極めてあげるのが指導者の仕事。」
う~ん、むずかしいけど大事なことですね。
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ではアレクサンダー・テクニークでは何をするのかというと、そういう、自分がいろんな状況に適応しようとするときに自分をどう使っているのか、それを丁寧に観ていく、というテクニックです。
「姿勢を矯正する」というより、より全体的(holistic)で、より繊細で、よりダイナミックなアプローチだと思います。
ただそれだけに、より忍耐強さが必要とされるということはあるかもしれません。