このあいだの金曜日、というか木曜の夜行で出て、金曜の夜行で帰ってくるという、車中ニ泊一日の無謀なスケジュールで、弘前まで行って帰ってきた。
もう、若くはないのにな。
(というか若いときでも、日帰りで行き返り夜行、というのは、やったことなかったな。現地で一泊していたよな。)
でも、奈良美智さんの、A to Z を、観たくなっちゃったのだ。
今月22日までしかやっていないので、行ってきてしまった。
夜行バスはロマンがあるので好きなのだけど、やっぱりちょっと背中の痛みが残るなぁ。(首は、空気まくらを持ってるとだいぶん助かるのだけど)
夜中に目がさめたら、バスの窓から北斗七星がきれいに見えた。
でも、弘前についたら、朝風呂をやってる温泉があるというので、それに入れたのはよかった。
300円で入れる大衆浴場。
ただし、ちょっと郊外にあるので、タクシーを使ってしまった。
タクシーのおじちゃんの青森弁が、いい味だしてる。
私のほかには二人だけ、年配の女の人と若い女の人が入っていた。
あとから入ってきたおばさんが、温泉のお湯をばっしゃばっしゃと、窓ガラスに順番にかけている。
裸でお湯をかけているから、お客さんかと思ったが、どうも温泉の係の人だったみたいだ。
部屋の中の鏡にも全部、お湯をかけたら、今度、向こう側の小さい空の湯船のなかに、手桶でお湯をいれて、満杯にしてしまった。
裸で、みごとな体の使い方だった。
「もとは、自然にむこうまでお湯が入ったんだけど、モーターのかげんで入らなくなっちまったんだぁね」と、青森弁で私に話し掛けてくれた。
(こんな話し方じゃなかったかも? いい感じだったのに、もう忘れてしまった。。)
お湯は、赤っぽいお湯で、とっても疲れがとれた。
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弘前はなぜか、ケーキ屋さんやカフェが多い町だった。
焼きたてのアップルパイ(アイスクリームつき)が、とってもおいしかった。
そして今だけ、奈良さんの絵の女の子の焼印のついたさまざまなケーキやお菓子が、町のいくつかのお菓子やさんで、売られている。
(そのお菓子やさんの独自のお菓子に、それぞれなりの工夫で焼印をくっつけている)。私は和菓子やさんでお土産に買った。
今回の展覧会にあわせて県外から来ている人が、私のほかにもけっこういるみたいだった。
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奈良さんの展覧会は、以前、東京の原美術館でやってたときに観にいって、そのときにとても心を動かされた。
なんというか、”場”というものに、働きかけ、また働きかけられている作品だったところが、とてもよかったのだ。
今回は、2回目だったし、はじめてのときほどは心を動かされなかったけど、こうやって活動を続けておられるのに、勇気付けられる。
とくに、奈良さんの地元の弘前の古い建物でやる、というのに、心惹かれた。
でも奈良さんも、「けっこう町が変わってしまって、ふるさとはむしろ、心の中にあるんだと思う」と言っていたのは、複雑な気持ちで聞いた。
たしかに弘前は、かなりいい町だけど、もっと昔はもっといい町だったんだろうな、という感じがする町だった。
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今回のA to Z は、ボランティアの人がすごくたくさんかかわっているようで、会場の設営も、はじまってからの受け付けも何も、全部ボランティアの人たちがやっているのだ。
会場に併設されているカフェの運営も、ボランティアのひとたちがやってる。
そのボランティアのひとたちが、とても楽しそうだったのがよかった。
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ただ、たくさんの人たちがかかわっているものなのに、それぞれの作品には、ひとりで向き合わされる、という感じを感じた。
作品の登場人物の女の子や犬も、みんなそれぞれひとりでがんばっている。
私はそれを、どううけとめられたのだろうか?
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弘前の人は、親切だった。
というか、杓子定規じゃなくて融通がきく。
帰りのバスに乗る前にも、温泉に入りたくて、「この近くに温泉ありますか?」と、タクシーに乗ったら、「すぐそこだよ。歩いてもいけるよ。でも、乗せてあげるよ。料金はいいから。」
と、メーターを倒して連れて行ってくれた。
でも残念ながら、そこはもう閉まってしまっていた。
でも心があたたかくなった。
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ミスドのウェイトレスさんが、私には、(イントネーションは多少違えど)標準語でしゃべってくれるけど、地元のおじさんが方言で話しかけたら、方言で答えていたのも、なんだかよかった。
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ちょっと駆け足の旅で、自分でも、ちょっとばからしかったかも、と、あとで反省しちゃった面もあるのだけど、
ちょっとでもその空間を味わえたのはよかったかな。
私にとってはじめての、青森県だった。