『オシムの言葉』

サッカー、ジェフ千葉のオシム監督の本>『オシムの言葉』
よかったです。サッカーに興味がある人にも、ない人にもお勧めです。

私はサッカー中継を観るのが好きでときどきテレビで観るのだけれど、観るとアナウンサーが「絶対に負けられない戦いです!」なんてアナウンサーがよく叫んでいる。それが日本代表の試合なんかだととくにそうだけれど、私はあれが苦手だ。そんなこと言ったってどっちかのチームが必ず負けるんだから、負けたらどう責任とってくれるんだろう?(でも負けたら「いやー惜しかったですね」と言うだけなんだけどね。。)

オシムは「勝たなくてはいけない試合などない」と言う。
とても練習が厳しいというオシムのチームですが、試合の前には、「絶対に勝たないとだめだぞ」とか、「相手の足を削ってでもゴールを守れ」、とか、そんなことは絶対言わないそうです。
「モチベーションを上げるのに大事なのは、選手が自分たちで物事を考えようとするのを助けることだ。戦術の話も試合の前にはほとんどしない。少なくてもお客さんは来てくれるのだから、まずは自分たちのために、自分のやれることをやり切るということが大事だという話をする。次に、対戦相手が自分たちと試合をするの当たって何を考えて臨んできているかということを思考させる」

中身のない言葉が氾濫している今だけれど、オシムは言葉をとても大切にする人だと思いました。

「言葉は極めて重要だ。そして銃器のように危険でもある。私は記者を観察している。メディアは正しい質問をしているのか。ジェフを応援しているのか。そうでないのか。新聞記者は戦争を始めることができる。意図をもてば世の中を危険 な方向に導けるのだから。ユーゴの戦争だってそこから始まった部分がある。」

そして反面、
「今の世の中、真実そのものを言うことは往々にして危険だ」
とも言っています。

オシムが生まれたときのユーゴスラビアのサラエボは、民族融和の象徴のような町だったそうです。それがオシムがユーゴスラビア代表の監督をしていた時期には今の分裂した国に分かれはじめて、新聞も、代表選手のプレーや質についてで はなくて、その選手がどこの出身か、どの民族か、そういうことばかりを書くようになって、そのうち、自分の民族の選手を試合に出すように、と、それぞれの民族の新聞がプレッシャーをかけるようになってきてしまったそうです。やがて 戦争が始まり、「サラエボ包囲戦」がはじまり、オシムは奥さんをサラエボに残したまま国外に出て戻れなくなってしまう。

あとでオシムは、たくさんの人がサラエボで亡くなったときに自分は国外にいたことを一生かかって消えない負い目というふうに言っています。

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言葉を大切にするオシムは選手ひとりひとりのこともすごくよく見ている。そしてその選手に必要なときに必要な言葉をかけている。その言葉はとても厳しいものになることも多い。でも選手は自分を見てくれていることをわかっているから、 オシムを慕う。

日本代表の阿部勇樹選手も、海外移籍の話があったときに、オシムが来年も指揮をとるならジェフに残りたいと言ったそうです。技術は抜群だったけどメンタル面が弱かった若い阿部に対して、先輩たちをさしおいてキャプテンを任せたのもオシ ムでした。阿部はびっくりしたそうですが、後で「今考えたらそこでやっていなかったら上の人に甘えたプレーをして、乗り越えなきゃいけないところを乗り越えられずにただ同じところに止まっていたと思うんです」と言っている。

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ほかにも本のなかで紹介したいエピソードはつきませんが、いい本でした。
ジェフ千葉はJリーグのなかではお金がなくて、ほかのチームのようにいい選手を買ってくるのは難しいそうですが、よく走ってスペクタクルな試合をする。試合たのしそうだなあ。去年は初優勝をしたし、だけどうちには衛星放送がないのでなかなかテレビでは試合を観られないので、いちどスタジアムに観にいきたいなあ。

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