アレクサンダー・テクニークと、触れるということ

長く続けている生徒さんたちのうちの有志の方を対象に、アレクサンダー・テクニークを使って人に触れることなどについてのワークをするクローズドのクラスをはじめました。

小人数で実験的にはじめていて、今は新規募集はしていないのですが、興味がある方がいたら、また別の形でできるかもしれないので、お問い合わせください。

アレクサンダー・テクニークのワークにおいて、「触れること」を使ってワークするというのは、けっこう大きい要素だな、と思います。
「触れる」ことをしなくても、アレクサンダー・テクニークを使うこと、教えることはできますが、触れることは具体的で、言葉だけでは伝わりきらないかもしれない、繊細なところを、より正確に伝えやすいと、私は感じています。
だから私は、触れることを使ってアレクサンダー・テクニークを教えるのが好きです。

もともとは私は、人に触れる、ということは、大の苦手だったんです。
たぶん、両親も、そんなにスキンシップをたくさんするタイプではなかったし、友達の背中などを気軽にぽんと叩いたりすることさえ、うまくできないようなタイプでした。
でも、アレクサンダー・テクニークを学ぶなかで、「自分自身の反応」というものに意識的になりつつ触れると、相手に起こることも変わったりする、ということを知ると、そこに奥深さを感じて、苦手意識はありつつも、だんだんおもしろくなってきました。

以前から、相手の反応については、よく気になるほうでしたが、アレクサンダー・テクニークを勉強するなかで、反応って、ネガティブな反応だけでなくポジティブな反応可能性もたくさんあるんだな、と、わかってきた、といえるのかもしれません。

私は、アレクサンダー・テクニークを使って人に触れるとき、次のようなことを考えます。

・その人全体で、相手の人全体に触れる。相手の人全体の可能性をみて、耳を傾ける(listen)
・触れる人も、触れられる人も、対等な立場。
・自分と相手を大切にする。
・ 「相手に何かをあげたい」という思いを、いったん抑制して、まず自分に戻ってからはじめる。

特に最後の、「まず自分からはじめる」というところが、アレクサンダー・テクニーク的で、ユニークなところではないでしょうか?

クラスではそれから、少し難しいかもしれませんが、次のようなことも、考えのヒントとしてあげてみました。

1、
体のどこかが動きづらいこと、緊張していること、力を入れていることなどについて、直す必要のあること、好ましくないこととして判断しない。

私たちは体を、緊張させること、固めることもできるし、ゆるめることもできる。
体のどこかを緊張させることも、状況によっては必要なときもある。
もしかしたら、今は必要がないのに緊張させているまま、ということもあるかもしれないけれど、そうだとしても、「だから、ゆるめましょう」「ゆるめるために、どうしましょう?」と、すぐにそこに、いかなくてもいい。
まずは、「へぇー、おもしろいな、何が起こっているんだろう?」と、興味を持ってみる。
そして、ただ今起こっていることに、耳を傾けている、
基本的には、それだけでいいです。

そうすると、不思議と、必要な変化が起こったりします。

ひとに触れるときでなく、自分自身にワークするときでも、同じですね。

2、
人に触れていて、気になるところがあったとき、自分のほうを変えてみる。

相手の首が緊張しているな、と感じたら、自分の首の緊張をゆるめてみる。

そうすると、不思議と相手の首の緊張がゆるむ。

というようなことが、よく起こります。

3、
「こういう方向にも行ける可能性があるんじゃない?」
とか、
「もっと広い自分全体としてみると、動きの可能性が広がるかもしれないね」
とか、提案することもできます。
1と2がベースにあると、行ける可能性や、ほかの選択肢が、見えてきやすくなります。
まずは1と2に、しっかり居ることが、大事だと思います。

——

以上は、クラスの参加者のために書いた文ですが、
レッスンの生徒さんにも、
「触れているとき、ゆりこさんは何をしているんですか? そんなに力も入れているようではないのに、なんだかとても楽になるので、とっても不思議です」
などと言われたりするので、載せてみました。

ときどき、「”気”を送っているんですか?」などと聞かれることもありますが、
そういうわけではなく、意図しているのは、上記のようなことなのです。

人に触れるという役割になったときの心構えのようなことについて書いた文章ですが、
たとえば介護や、支援など、アレクサンダー・テクニーク以外で人に触れるときや、
楽器に触れるときなどにも、もしかしたら応用できるかもしれませんね。

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