アレクサンダー・テクニークでは、よく「首を自由に」と、言いますが、
それは、「首を固めてはいけない」という意味ではありません。
たとえば、急に、人が自分に近づいてきたり、急に、物が顔の前に飛んできたりすると、自然に、首を固めることが起こるでしょう。
それは、自分を守ろうとする、ごく自然な反応です。
生き物には、自分を守ろうとする機能が備わっているので、その機能が発動しているのです。それは悪いことでもなんでもありません。
歯医者さんや、美容院で、首を固めてしまう、という場合でもそうです。
もちろん歯医者さんや、美容院は、あなたをサポートしてくれようとしているのです。それはわかっているはず。でも、それがわかっていたとしても「椅子に座って受け身な状態で、人にお任せする」という状態は、生き物にとって、「首を固めて防衛する」という反応が起こっても当然な状態ではあるのですよね。
それは、まったく自然なことなのだな。
ということは、わかって、認めてあげましょう。
ただ、首を固めている状態が長く続くと、体に負担がかかり、肩凝り、その他の症状につながったりはしやすいです。
また、首を固めている状態のまま、活動しようとすると、活動がうまくできず、ぎこちなくなってしまう。
手や足も動きづらくなったり、声が出しづらくなったりもする。
そういうことを考えると、固めるのをやめたいときには、やめることができるようになると、いいですね。
そのために必要なのは、無理やりに「ゆるめよう」とすることではありません。
自分自身が、「今ここでは、固めなくても大丈夫なんだな」と感じられるような、信頼感を持てることです。
そのためには、
今、ここの、安全を確認したうえで、
安全な場所なら、首をラクにしていても立っていられる、という経験をしておくこと、
地面が支えてくれていることを思い出すこと、
背骨全体が、しなやかに働いていることを思い出すこと
などなど、いろいろと、役に立つことがあります。(その人その人によって、違うことが役立つかもしれません)。
ただ、繰り返しになりますが、
首を固めて、自分を守ろうとするという機能そのものは、大事な機能です。
怖いと感じたときには、首を固めることができる、という能力は、大事な能力です。
そのこともまた、忘れずに。
知らないうちに首を固めていた自分に気づいたら、「ああ、自分は、怖かったのかもしれないな」と、まずは、優しくいたわってあげるといいと思います。