【Q1】私は楽器をやっていないのですが、アレクサンダー・テクニークのレッスンを受けられますか?
もちろんです。たしかにアレクサンダー・テクニークは、演奏家の方々のあいだに近年広まってきましたが、もともとは、とくに演奏家のためのものではないのです。FMアレクサンダーさん自身は、「声が出なくなる」という問題をきっかけにアレクサンダー・テクニークを発見し、それは自分全体の使い方の問題であるとわかりました。つまり、すべてのことにつうじるのです。「自分の使い方」を見直したい方、心身のバランスを整えたい方、緊張しすぎる傾向をなんとかしたい方、単純に興味がある方、どなたでも歓迎です。
【Q2】
レッスンの間隔はどのくらいがよいでしょうか?
時間的、経済的に可能ならば、週1回か、2週に1回くらい来ていただくことがお勧めです。ずっとそのペースというのが無理そうでも、最初の3回ぐらい週1回か、2週に1回来られるのであれば、来ていただいて、その後で間隔を空けていくというのもよいと思います。
間隔をあまり空けすぎないほうがいい理由は、体の変化を忘れてしまわないうちにやったほうが効率がよいということと、レッスンとレッスンの間に起こったこともレッスンに活かせるとよいと思うからです。
でもそれが無理だからとあきらめなくても大丈夫です。アレクサンダー・テクニークがおもしろそう、自分に合っていそうと思われたなら、ご自分に無理なく続けられるペースをお知らせください。もし間が一年ぐらい空いたとしても、まったく忘れてしまうということはないものです。
【Q3】レッスンを続けると、何が起こるのでしょうか?
2回目以降、どんなふうにレッスンは進んでいくのでしょうか?
レッスンの進め方としては、「同じ内容を繰り返す」ことと、「新しいことをやってみる」こととの二つがあります。
繰り返すこととしては、寝て休息するワークや立ったり座ったりのワーク(チェアワーク)、あるいは呼吸や声のワークをやります。同じことを繰り返すたびに、動きの質、気づきの解像度が細やかになり、また深まっていき、毎回新たな発見があるでしょ う。
新しいこととしては、体の特定の部分や動きについて見ていくことや、日常や仕事、趣味の動きや状況に実際に応用してみることがあります。何でも、やってみたいことや、気になっているシチュエーションをお知らせください。寝て休息するワークやチェアワー クでプライマリーコントロールや、抑制/やめていくことの原理、自分全体の意識のしかたを学んでいくと、それを、さまざまな動きに応用しやすくなります。
アレクサンダー・テ クニークは無理をしないワークなので、そのときのその人の許容量を超えた変化が起こることはなく、その人が受け取れるだけの変化が起こります。何かを掴んだという実感がない回もあるかもしれません。もの足りないと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、その分、日常に戻って混乱したりすることは少ないでしょう。気づかないうちに着実に変化しているので、自分自身を信頼しましょう。
【Q4】レッスンを受けたあとで痛みが出ることはありますか?
アレクサンダー・テ クニークは無理をしないワークなので、ほとんどの場合はないですが、まれにはあります。長年、無意識に体のどこかを固めていた場合、そこがゆるむ過程で痛みとしてあらわれる場合です。今まで何も感じられなかったところが、感覚が戻ってきている、といえるかもしれません。だいたいのケースでは、3日ほどでその痛みは減っていきますが、もし消えない場合はご相談ください。
【Q5】精神科を受診しているのですが、並行してレッスンを受けられますか?
アレクサンダー・テクニークは、神経系を落ち着かせるためにも役立つので、精神面の治療やカウンセリングなどと並行して体をとおしてワークすることが役に立つことが多いと思います。今まで、欝で投薬治療中の方が生徒さんとして来られていて、心を安定させ、薬を減らしていき止めていくプロセスの一助になったと報告してくださっています。ただし、それぞれの方のケースによって異なりますので、かかっている医師とご相談ください。
【Q6】レッスンを受けたときは、いい状態になったのですが、数日たったら元に戻ってしまったように感じます。どうしたらいいでしょうか?
・自分では「戻ってしまった」と感じても、完全に元通りになることはありません。直後の新鮮な感覚がうすれて、自分に馴染んできたのかもしれません。
・よい状態、よい姿勢を維持しようとするのは逆効果です。「維持しよう」とすると、体を固めてしまうからです。むしろ「悪い姿勢」になったとしても、そこから戻る方法、動き出す方法を知っていることのほうが大事です。
・いつもの癖に戻ったと感じたら、それは自分をよりよく知るチャンスです。いつもの癖を「悪いもの」だと考える必要はありません。人の癖に無意味なものはなくて、それなりの理由があって培われてきたものです。癖に、「今までごくろうさま。でも今はその癖はなくても私はやってい けそうよ。」と、言ってあげるようなつもりになってみてくださいね。でも、すぐに離れていかなかったとしても、行ったり来たり、少しづつで大丈夫です。
・急いで癖を変えようとしなくてよいです。その代わりに、たとえば、
首が楽で、頭が動いて脊椎全体が解放されていくことを思う
あるいは、
・「足が地面に軽やかに着地している」ことを思ってみると、どうでしょう。
どちらも、自分全体としてのコーディネーションをととのえることにつながります。
・痛みや違和感がある方は、直接、痛みや違和感がある個所ではなく、体のなかの、そこから遠い場所、からだの中で、意識が薄くなっている場所に意識をもっていって、自分全体を見てみてください。
・すぐに変化しなくても焦ったり、無理に変化を起こそうとしないでください。体が長年の習慣を手放して、新しい習慣に適応するには時間が必要です。無理すると、自分のシステムのなかで葛藤が起こりやすく、長続きしません。見えないくらい、感じられないくらいの変化がちょうどいいのです。感じられないくらいの変化が積み重なって、知らず知らずのうちに、意味のある変化になっていきます。後でふりかえるとそれがわかるでしょう。
【Q7】最終的には自分でできるようになりますか?
はじめてのレッスンの後にはたしかに、「いい感じで気持ちよいけれど、これを自分でできそうに思えません」「先生にやってもらったからできたとしか思えません」と言われることもあります。が、そう思えてしまうときでさえ、実はすでに自分でやれているのです。それはたとえば、やりすぎていたことを減らしたことによって現れた自分自身かもしれません。
そのあと家に帰るといつもの癖にもどるかもしれませんが、そこから、「いつもの癖と違う選択をするためにはどうしたらいいのだろう?」という問いが生まれ、探究がはじまります。その探究に教師は寄り添います。回数を経るごとに、自分でできることが増えてきたり、自分のふだんの状態が改善していくことに気づくと思います。そして、人生のいろいろな場面に実践的に応用していけるようになっていきます。