アレクサンダー・テクニークにはいろいろな学び方がありますが、石井ゆりこのレッスンは、たとえば以下のようなこことを組み合わせて進めます。いくつかのやり方を組み合わせることで、より学びやすくなると考えます。具体的なことは、おひとりおひとりのご希望や目的や状況に応じて、相談しながら一緒にレッスンをつくっていきたいと思います。
- 寝た姿勢でのワーク (テーブルワーク)
- 立つ、座る、歩く、
- 日常生活の動き、デスクワーク、パソコンを使うなどの姿勢や動き
- 楽器の演奏、歌う、話す、スポーツやパフォーマンスの動き
- 体の地図(ボディ・マッピング)とアレクサンダー・テクニーク
- 呼吸・発声とアレクサンダー・テクニーク
- 継続的なレッスンについて
寝た姿勢でのワーク (テーブルワーク)
仰向けに寝た姿勢で休み、背骨のもともとの長さ、体の広さ、長さ、奥行きを思い出します。日常の緊張やストレスによって縮めていたところが広がって解放されるのにゆだねます。教師は、手で体に触れたりゆっくり動かしたりして、休むことをサポートします。目覚めていながら休んでいる、「建設的な休息」です。
そこから起き上がって立つと、今までと立ち方が変わっていることに気づくかもしれません。バランスの取り方を学び直すチャンスです。起き上がった後、歩く、座る、日常の動きなどで、ふだんの癖と違う動きをやりやすくなります。
寝た姿勢でのワークは、腰やひざ、股関節に問題がある場合などにも効果的です。
教師は、自分自身の使い方に意識的になって「何もしない手」で触れ、なるべく少ない力で動かすことで、生徒さんの、心身の注意力が目覚めることを助けています。
関連リンク:アレクサンダー・テクニーク教師は触れてワークするときに何をしているか?/テーブルワークについて
以下は、あるレッスン風景の動画です。(「コ2マガジン」に取材していただいたときのもの。このときは基礎編として、寝た姿勢のワーク、座る、歩くなどを行いました。)
立つ、座る、歩く、腕を伸ばす、などのシンプルな動きを見てみる
立っているところから座る、座っているところから立つなどの、体勢を変えようとするときの、「その姿勢になろうとする動き」を見てみます。「さぁ、動き出そう」とするときの自分の反応が変わり、身構えずに動けるようになると、結果としての姿勢も自然によくなり、長く同じ姿勢でいることも楽になります。またその間の動きもしなやかに自由になります。シンプルな動きからはじめることで、そこでの気づきを、より複雑な動きや状況や、難しい姿勢にも応用しやすくなります。
体全体で歩くということ、立つところから楽に膝と股関節を少し曲げた、”モンキー”(立つのと中腰のあいだ)、腕を伸ばす、曲げるなどの動きも取り入れます。
体と心は神経システムでつながったひとつのものなので、体の動きがより自由になると、心にも余裕や安心感が生まれます。
日常生活の動き、デスクワーク、パソコンを使うときなどの姿勢や動き
階段の上り下り、鞄を持つ、おじぎ、正座をする、重いものを持つ、台所仕事、掃除、畑仕事、PC(パソコン)・・・ など、あらゆる動きにアレクサンダー・テクニークを生かすことができます。
デスクワークではたとえば、座るときの頭と背骨、骨盤、足との関係、手を使うこと、見ることについてなどをみていきます。長い時間机に向かって仕事をしても疲れにくく、集中が持続するようなあり方が見つかるでしょう。
見る、聞く、考える、などにもアレクサンダー・テクニークを応用できます。一見、動きがないような行為のなかにも動きがあり、これらも体全体でやっていることだと実感できると、体のなかに余裕が生まれ、情報を受け取る力が増します。
楽器の演奏、歌う、話す、声を出すこと、ダンス、スポーツやパフォーマンスのときの動き
ミュージシャン/音楽家の方へのアレクサンダー・テクニーク・レッスンでは、立つ/座るなどのワーク、寝た姿勢でのワークなどのあと、楽器を構え、音を出し演奏していただきます。
演奏以前の状態が変わることで、楽器の音(声楽や歌なら、声の質)が変わります。
「さあ、楽器を弾こう!」と楽器を構えるときに、無意識に身構えている方も多くいます。そのあり方が変わると、美しい音が出しやすくなり、大きな音、高い音、低い音が出しやすくなり、また速いフレーズを弾くのが楽になったりします。そして、より余裕を持って音楽のことを考えながら演奏できるようになり、もっと表現力豊かに、そして楽しく演奏できるようになるでしょう。
「ふだんの練習が楽しくなった」「練習の効率があがった」 「本番であがらなくなった」などという声をよくいただきます。
以下のようなことも見てみます。
- 脱力と、効率的な力の使い方
- 指先の使い方、腕の動き
- 楽器の構え方
- 楽譜を見る、指揮者を見る、共演者、お客さんを見る
- ステージ上での緊張とのつきあい方
☆ よろしければ楽器、楽譜をご持参ください。(大塚教室、藤沢スタジオともにピアノが あります。藤沢スタジオには練習用ドラムがあります。)
☆ ダンサーやスポーツをされる方は、部屋でできる範囲での動きを、動きの 軸、動き出しについて、腕の使い方、腰の使い方などを中心に、見ていきます。⇒ ダンサー・アスリート・身体表現をする方
体の地図(ボディ・マッピング)とアレクサンダー・テクニーク
私たちの体は、とてもうまくできています。どうなっているか、どう動かすかについて知らなくても動かせるほど、からだは賢く、そして精巧にデザインされています。
しかし、ときに、自分の体を実際より狭く思っていたり、立体ではなく紙に書いた絵のように平面的にイメージしていたり、動けるはずのところを「動かないようにしてしまっている」ことがあります。アレクサンダー・テクニークはそのような、自分の体についての無意識の思い込みによって自分を制限してしまっていることに気づき、より現実に即して「体の地図をとらえなおす」ことに役に立ちます。
「体のどこかが痛いのは歳だからしょうがない」
「できないのは能力がないからしかたがない」
「体が小さいから」「筋力がないからしかたない」
などと、自分の体について思っている方がいるかもしれませんが、それは思い込みかもしれません。
今ある自分の体でできることはもっとある、と、きっと気づくことでしょう。
体の地図を見てみるときにアレクサンダー・テクニーク教師として強調したいのは、
・体は動くもの、動いているもの、ということを忘れない
・どこかの部分だけに焦点をあてるのではなく、それぞれの部分のつながり、全体を見る
という二つです。この視点があることで、「もの」ではない、有機体として自分の体を認識することができます。そうしてこそ、実際のその人の活動や、あり方に生かしやすくなります。
自分の体の動きのダイナミックさと精巧さを再確認し、日常や楽器演奏など、いろいろな側面に活かしてみましょう。
呼吸、発声とアレクサンダー・テクニーク
F.M.アレクサンダー氏は教え始めたころ、「ブリージング・マン(breathing man/呼吸の人)」と呼ばれていました。アレクサンダー氏のレッスンを受けて呼吸に関わるトラブルを解消できた人がたくさんいたのです。 アレクサンダー氏自身の探究のきっかけが、自分の発声の問題で、それは呼吸と深くかかわっていました。
といってもアレクサンダー・テクニークは、呼吸法とは違います。体全体、自分全体の使い方を見直し、不必要な緊張を見直すことで、自然な呼吸、自然な発声ができるようになるというアプローチです。
(私自身も、アレクサンダー・テクニークを学び始めて声を出すのが楽になったと実感したひとりです)。
上記に書いた、寝た姿勢のレッスン、立つ、座るなど日常の動きのレッスンを行うだけでも呼吸に変化が現れることが多くあります。さらに、「ささやくアー」のエクササイズや、実際に声を出すこと、話すこと、歌うことなどをレッスンで取り入れることができます。
継続的なレッスンについて
レッスンを受けられて、ご自身に合いそうと思われたら、できる範囲で継続されるのがお勧めです。
継続される場合、いらっしゃったときに次の予約ができます。
継続のインターバルは、週1回、2週に1回、3週に1回、月1回など、それぞれの方のご都合に合わせていらしていただいています。
「一回でできるだけたくさん学びたい」と言われる方もいますが、人の神経システムとして、一度に受け入れられる変化や、新しい経験には限度があるのです。多くを一度に学ぼうとしすぎると、頭だけで理解したつもりになって神経システムがそれに追いつかないこともあります。なので、最初のときはざっくりとした違いを経験し、少しづつ、新しい自分の使い方の精度をあげ、それをみていく解像度をあげていくというプロセスが必要です。
楽器や語学と習得と同じように、少しづつの積み重ねに意味があります。
「早くひとりでできるようになりたい」と思われるかもしれませんが、ひとりでできるようになるためには、一定期間、教師と一緒に学ぶことがお勧めです。はじめから一人でやろうとして、必要以上にやりすぎてしまう癖がぬけず、何がちょうどよいのかわからなくなってしまった、という声もききます。そういうときは、自分の頭での理解に頼りすぎず、まずは経験をある程度積むことで、自分のからだと心を信頼していくコツを学んでおくことがお勧めです。
日常に戻って、再びレッスンに来て、、、の繰り返しのなかで、自分の癖や傾向を理解し、学んだことを自分のものとして応用できるようになっていきます。そして、最初よりさらに繊細で深いレベルで変化し続けていきます。それとともに、アレクサンダー・テクニークとは何なのかの理解も深まっていくでしょう。