本の紹介『ペコロスの母に会いに行く』

本の紹介『ペコロスの母に会いに行く』

アレクサンダー・テクニークとは直接関係ないのですが、介護を経験された方の、とてもすてきな本を読んだので紹介します。

『ペコロスの母に会いに行く』 岡野雄一著

長崎の町で、グループホームに預けた母に会いに行く日々を綴ったマンガです。

長崎弁での母子のやりとりのセリフが、とてもいい。

この本と、続編『ペコロスの母の玉手箱』に描かれるのは…

「いまは〇〇だね〜」などという息子に答えて「いまって、いつや?」と問う母の世界は、時空間を飛び越えて、天草の農家に育って子守に追われていた幼女だったころ、結婚して長崎に出てきて必死だったころ、ハゲた息子が目の前にいる「いま」、そして、元、酒癖が悪かった夫に支えられ温和に散歩する、いつかわからない現実…などなど、いろんな次元を言ったり来たりします。その世界ににこにことつきあう息子ペコロスさんにとっての長崎の街も、時間が折り重なって重層的な街になっていきます。

大きな字と、やさしい絵柄のマンガなので、マンガが苦手な母(実の母と義理の母の介護をしてきた。自身は70代でまだまだ元気)にも読んでもらえるかも?

この本については、六車由美さんが紹介されていて、知りました。
六車由美(むぐるま・ゆみ)さんが書かれた以下の2冊も、とてもよかったです。

『介護民俗学へようこそ』
『驚きの介護民俗学』

民俗学者だった六車さんが、30代で学者を辞めて、地元の介護施設で働き出して、そこで出会ったおじいさん、おばあさんたちとの触れ合いや、そこで聞いたお話、考えたことをまとめた本です。

介護にかかわる方のためのアレクサンダー・テクニークの本 『ラクになる介護術 毎日の「からだの使い方」からはじめる』を書くときに、こういうふうに、お年寄りの方と寄り添うのが、いいなあ、と、とても思いました。
それで、私の本は「からだの使い方」がテーマだけど、自分自身にも、相手の人に対しても、どういう意図、態度で接するか、ということについても、考えるような本にしたいな、「からだの使い方」は、そこにつながる、という視点を持って書きたいな、と思ったのでした。

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うたを作ってうたう人

うたを作ってうたう人

きょうの生徒さんのひとりは、曲を作り始めて間もないシンガーソングライター。人前で歌うのも、はじめてあまり日が経っていない彼女が、恥ずかしがりながら、レッスンの中で自分の曲をうたってくれた。

とてもすてきな歌だったのだけど、思うように演奏できなくてミスをしたことなど、とても気にしていた。
でも、聴き手としては、ミスがあったとは全然気づかなかった。

歌の世界全体からすれば、ミスなんて、全然気づかないほど。

自分が作った歌詞や、歌の出来についても、本人としては、まだまだ全然満足していないようだった。

私からすれば、充分いい歌だった。殿堂入りの名曲とまでは言わないけれど…。
歌っていうのは、完璧なメロディや、完璧な歌詞じゃなくても、
歌詞やメロディにおさまりきらない思いさえも載せて運んでくれるもののように思える。

いま世の中で歌われている歌も、そういうものなんじゃないか?

まだ、とまどいながら、疑いながら歌っているような彼女。
その、とまどいや、疑いさえも、素敵なんだけど、
これから歌い続けるにつれて、
とまどいや、疑い以上に大きい
彼女の思いがもっと、歌にこめられてきて、同じ歌に、もっともっと命がふきこまれて生きていくんじゃないか?と、想像した。
楽しみだな~。

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ホタル

ホタル

きのうは、ホタルたちに無事会えました。
都内での仕事から、急いで藤沢に帰って、自転車で川沿いを上流に向かって40分。河原沿いの公園も、夜は真っ暗な道です。
蛙の鳴く声を聴きながら。
そして住宅街にそれて、谷戸に入る道を探す。
小さいろうそくのランタンの、最低限の灯りが灯されています。
田んぼから、蛙の合唱。
そして、光ったり消えたりしながら飛んでいるホタルたち。
目が暗闇に慣れてくると、見えてきます。
ライトやスマホのあかりをつけたり、写真を撮るのは、繊細なホタルたちが困るので、禁止。
現代社会ではなかなか経験できなくなってしまった、貴重な暗闇。

今年のピークは過ぎた、と聞いていたけれど、まだまだたくさんいました。
暗闇のなかの、蛙の声と、ホタルの灯り、1時間ぐらいそこにいて、
また川べりを帰ってきました。
いい時間でした。
石川丸山谷戸は、地権者の人たちとボランティアの人たちで守っている里山。住宅街や農家の方の土地のあいまにあるので、あまり宣伝はしておらず、地図にものってない。
「川の上流ってことはわかったから、行ってみよう」と、一昨年、相方と出かけて、たどりついたのが最初でした。
でも口コミでだんだん人気になってきたらしく、親子連れなどもけっこう来ていました。
子どもたちに、小さいころからこの感覚を味わってもらえるのは、いいな!
自然を尊重しつつ、自然を味わえる、地域の人のくらしと共存した環境が、いつまでも残ってほしいな。

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