ジュリアン・ラージと音楽とアレクサンダー・テクニーク

ジュリアン・ラージと音楽とアレクサンダー・テクニーク

ジャズ・ギタリストのジュリアン・ラージが来日して、ライブに行ってきました。今回もすばらしかったです!今回はトリオで、即興で繰り出されるフレーズたちが、スリリングでした。そして、さまざまなフレーズを繰り出す彼のギターは、そのときごとに音色が違えど、いつも音がすごくきれいです。

ジュリアンは若い頃、私が学びに行っていたボストンのアレクサンダー・テクニークの教師養成コースに学びに来ていて、そのときに私ははじめて会いました。15年ほど前のことです。そのあと彼は大活躍するようになって、世界中で演奏ツアーをしていてとても忙しそうです。今回も、来日した翌日から毎日ライブをして、翌日に帰るというハードスケジュール。
それなのに、毎回、新鮮な音楽を生み出しているのが、本当に凄い!

でも今回、忙しい合間を縫って、私のレッスンを受けてもらえる時間を取ってもらえました。「アレクサンダー・テクニークは自分ではいつも意識しているけど、レッスンを受けるのは、ほんっとうにひさしぶり。いろいろと思い出せてよかった!」とのこと。

地面からサポートされていること、腕が体の中心からはじまっていること、上だけでなくあらゆる方向があること、骨盤が立体であること…。

忙しい中でもいつも前向きでいいエネルギーを出しているジュリアンだけど、首の痛みとかはあるようで、アレクサンダー・テクニークが助けになるといいな(彼には若いときに学んだ経験の下地があるので、すぐに思い出すことができた様子でしたし、きっと助けになっていると思います)。

ジュリアン・ラージの新しいアルバム “Speak to Me” とてもお勧めです!

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フランク・ピアス・ジョーンズ”Feedom to Change”読者並走翻訳プロジェクト

フランク・ピアス・ジョーンズ”Feedom to Change”読者並走翻訳プロジェクト

FMアレクサンダーさんに直接指導を受けた教師のひとり、フランク・ピアス・ジョーンズが、アレクサンダー・テクニークについて書いて1976年に出版された、”Feedom to Change”という名著があります。
 
『存在に触れる』(トミー・トンプソンが書いたアレクサンダー・テクニークの本)を訳した松代尚子さんが、先週から、この本を訳し始めました。
 
フランク・ピアス・ジョーンズは、私の先生の、トミー・トンプソンの先生だった人で、トミーの話の中にもしょっちゅう出てきます。
 
そのトミーの弟子のデビが5月に来日しましたが、デビも以前から、この本をとても勧めていました。(ぼろぼろになるまで読んだ本を見せてくれました!)それで、「この本は日本語に訳されている?」と聞かれ、「残念ながらまだなんです」と答えると、とても残念そうでした。
 
かつて、2002年(22年前!)、私がボストンにあるトミーやデビの学校に、最初に勉強しに行ったすぐ後に、この本を一部分、訳したことがありました。本の後半にある、「教えることへの覚え書き」「F.M.アレクサンダーと感覚の再教育」「学び方を学ぶ」の3項目です。訳したといっても、わからないところは飛ばしたままになっているような、そんな訳です(私の英語力ではなかなか難しくて)。
 
でも、自分にとって、とても洞察になるような内容で、なんとかこれを全部読みたい、と思ったのでしたが、そのあと年月が経ってしまいました。
 
その十数年後、デビの来日をきっかけに、「教えることへの覚え書き」を松代尚子さんに直してもらい、いつか本全体を訳したいね、と話していたのですが、それから、また年月が経ってしまいました。
 
このたび、満を持して、全部訳すことをなおこさんが決めました。
 
出版できるかどうかはわかりません。(訳が完成した暁に、出版社のMouritzに連絡して、許可が取れたら出版ができるようになるはず)。
 
まずは、クローズドなグループを作って、「勉強会」の名目で訳していくという形でやっていきたいと思います。(デビとも相談して、そういう方向になりました)。
 
 
noteのメンバーシップ機能を使って、週2回で各1ページ半ずつくらい翻訳をシェアする形で考えています。登録していただくと、メールに翻訳をお届けします。そして、読者のみなさんからは、気が向いたときに随時、感想やフィードバックをいただく形で、翻訳に併走していただけると、翻訳者なおこさんが、本を訳しきるための励みになります。
 
不定期で、メンバー限定のZOOMを使ったシェア会的なものも行うかもしれません。

週2回で1頁半のペースで、一年半で本が訳し終わる見通しです。

月々1000~1500円くらいの有料にさせていただきます。料金は8月中に決定します。(35人ほど集まったら翻訳の時給1000円になるくらいの料金…)。月1320円とさせていただくことに決定しました。
 
アレクサンダー・テクニーク教師や、教師を目指して勉強しているみなさん、ずっとアレクサンダー・テクニークを実践し続けたいと思っている方々には、とてもお勧めです。
 
アレクサンダー・テクニークって何をやっているのか、説明しずらい、と、よく言われますが、そこを、丁寧にわかりやすく書いています。言葉にしにくいアレクサンダー・テクニークを、なんとか論理的・科学的(1970年代当時の科学で、今との違いも感じられますが)に伝えようとしていている本です。
それと同時に、フランクから見た、F.M.アレクサンダーの人となりについて書かれてもいて、それも興味深いです。
 
なおこさんは、訳しながら、「内容がほんとにおもしろい。アレクサンダーについてこういうふうに書いてくれてうれしい。訳してて楽しい」と言っています。
 
 
”Feedom to Change” の、’notes on teaching’という項目なかの一節を紹介します。
 
このテクニークは変化と成長を扱います。
知っていることを他の人に伝える前に、教師は[変化と成長の]プロセスを実際的に理解できるだけの十分な変化を、自分の身をもって体験していなくてはなりません。
しかも、変化のプロセスは続いていなくてはなりません。アレクサンダー・テクニークを教えるようになったとき、そこで学びがストップしたりはしないのです。
それどころか教師はレッスンの中で、生徒さんと同じくらい学ぶはずなのです。
 
この項は、その続きも大変面白く、片桐ユズルさんが「地図は現地ではない」と言っていたのは、アレクサンダー・テクニークで言うと、このことだな、と思い至るようなことも書いてあります。

もしよかったら、一緒に読みましょう。

“Freedom to Change”読者並走翻訳プロジェクト
あまり大々的には募集しないつもりですが、アレクサンダー・テクニーク教師仲間の方々、そして、教師でなくてもATに興味を持ち続けている仲間の方々のご参加をお待ちしています。
 
【追記】なおこさんより、参加希望の方々には、トミー・トンプソン『存在に触れる』も読んでいただけたらとのことです。この2冊は、同じことを、少し違う方向から光をあてているような本だと思います。『存在に触れる』は私のところにも今、若干在庫があります。送料込み3200円(ただし、今の在庫がなくなったら、円安を鑑みて、値上げさせていただくことになりそうです)。Amazonでも購入可能です
 
 
“Freedom to Change”の原書を合わせて読みたい方は、こちらで買えます。 Kindle版なら千円ちょっとで買えます。 ペーパーバック版はあいにく、高騰してます。  

Feedom to Change book
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整理しないまま、ペンの動きにまかせて手書きで文章を書いてみる

整理しないまま、ペンの動きにまかせて手書きで文章を書いてみる

アレクサンダー・テクニークに限定せず、セルフケアに役立つワークを紹介します。

「さまざまなことで心理状態が揺らいでしまい、演奏に影響してしまいます。演奏するときに、できれば、そういうことをリセットしたいのですが…」という方などに…。

【整理しないまま、ペンの動きにまかせて手書きで文章を書いてみる】という方法

心理状態を、演奏や、そのほか、やりたいことや、やるべきことをするのにちょうどよいくらいに落ち着かせるために、今までに紹介した、セミスパインや、気づきをもった体の動きのワークなどによって、体の緊張をゆるめることが大変役に立ちます。
それとともに、「書く」ことが役に立つことがあります。

ここで紹介するのは、「整理しないまま、ペンの動きにまかせてとりあえず書く」ことです。

タブレットやスマホやPCで書くより、アナログに、紙とペンか鉛筆で書くのがおすすめです。

書くといっても、目標や計画などポジティブなことだけを書くのではなく、
分析するなど知的な作業としてだけでもなく、
弱音、愚痴、不満などを含めた感情や、頭のなかでグルグルしているような考えを、とりあえず外に出してみるために書く。
生産的な考えではないと思っても、人に言うのは恥ずかしいと思ってしまうようなことでも、自分の中に溜まってしまわないために、自分だけのために書いてみる。

書くことによって、自分の内にある思いを外に出すと、新しい考えや、意欲が自分のなかに入ってくる余地が生まれるようです。

「外に出す」方法には、ほかに「人に話して聞いてもらったり、読んでもらったりする」という方法もありますし、それももちろん大変役に立ちますが、
ときには、ひとに話せるほどにまとまった言葉になっていないような考えや感情にとらわれてしまっているということも、あって不思議ではありません。または、すでに人に話して、頭ではどうしたらよいかもわかっているのだけど、気持ちが納得できていない、とか、体が動かない、というようなこともあるかもしれません。

そんなときには、無理に考えを整理しようとせず、無理に急いで活動に入ろうとせず、その前に、言葉にならないような思いとか、言葉にしたらくだらなすぎるような思いも、あえて文字にして書いてみる。

人に見せない自分が自由に書けるためのノートを一冊用意して、まず今日の日付だけ書いて、あとは何でもいいので書き始めてみましょう。

やる気が出ないときには、悩みごとがあったりするようなときはとくに、すぐに解決策を得ようとする前に、自分の感情と一緒にいつつ、書いてみてください。

悲しかったり腹が立ったり、さびしかったりする感情も、自分の内臓のあたりにあるままで、そういう感情をどこかに追いやろうとしないでみてみましょう。
感情というのは、追いやろうとしないときのほうが、時間とともに自然に変化していきます。
演奏するときにも、感情をおいやらずに、ネガティブな感情であってもそういう感情と一緒にいて、演奏してみるとどうでしょうか?

からだに気づきがあって、体を固めていないときだと、さまざまな感情を抱えながらいることができると思います。それは、人間性の豊かさにもつながるのではないでしょうか。

私は、いまひとつやる気が出なくて、何も書くことも思い浮かばないようなとき、ノートに向かって、
「さっき食べたおかずはいまひとつおいしくなかった」とか、そんなようなことから書き始めて、しばらく書いていると、いつのまにかもう少し本質的な、実は気になっていたことが言葉になってきたりします。

書くことによって、頭がすっきりするし、
愚痴がインスピレーションに変わるかもしれません。
「〇〇が、こんなに嫌なのは、私はこういうことをやりたかったからだ」ということに気づくかもしれません。
それで嫌なことがなくなるわけではないけれど、「嫌だ」と、はっきり自覚することによって、嫌なこととつきあいやすくなるかもしれません。

はっきりした洞察は特になくても、書いた後、なぜかやるべきことに取り掛かりやすくなったりすることもあります。

毎朝、朝起きたら15分くらい、書いてみる。それで一日をはじめてみましょう。

これは、ジュリア・キャメロン著 ”Artist Way” (邦題:『ずっとやりたかったことを、やりなさい』) という本のなかに書かれている「モーニング・ページ」という方法から取りました。この本にはほかにも、さまざまな分野のアーティスト、そして、アーティストとして挫折しかかっているけどあきらめきれないような人が、創造性を取り戻すために役に立つワークとインスピレーションがたくさん載っています。

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ボストンのChipさん

ボストンのChipさん

木曜日に一緒にお夕飯をしたのは、2000年にはじめてボストンに行ったときからずっとおうちに泊まらせていただいていた Chipさん。

Chipはアレクサンダー・テクニークとは全く関係ない人。

ボストンの宿は高く、そのころはAirBNBもなかった。でもなんとか安く泊まれないかとインターネットを探していたら、roommateservice.com というサイトが見つかった。これは、アメリカには大きい家が多くて単身者用の家が少なく、大きい家を持ちきれない人と、一人分の住処が欲しい人をマッチングする目的のサイトで、短期間の旅行者向けではなかったのだけど、そこで見つけたChipに、「短期間でも可能ですか」と聞いてみたら、快くOKしてくれた。

自己紹介には、子どもに国際的な多様性のある環境を経験させたいと思って長年留学生を受け入れていた、と書かれていた。ほかにも自分自身についても長い説明が書かれていて、この人なら受け入れてもらえそうと思った。そして、宿代もリーズナブルだった。

最初に行ったときは東欧から来ていた女の子がいた。そのあとは、もう少し大人の同居人ーピアノを弾く猫を飼ってる看護師のクリスと、介護職のブライアンが、カップルではなくそれぞれの世帯を、Chipの家の中で、台所とバスルームをシェアして暮らしていた。

私はボストンにいるときは、屋根裏の部屋に泊めてもらった。朝起きた時に窓から木々が見えるのが好きだった。ベッドはスプリングがいかれていてイマイチだったので、寝袋で寝てた。

ボストンのDochesterという、古い建物が多く残っている街。今はそんなことないけれど、80年代90年代にはガラが悪いところだと思う人も多かったらしい。黒人が多い街。

はじめて行ったとき、そんなに黒人の多いところに一人で地下鉄で行ったことはなかったので少しドキドキしたけど、実際は危ないとかそういうことはもちろん全くなかった。

でも、もう少し前の時代はもしかしたらもう少し危なかったのかな? 今回あらためて、「なぜDochesterに住むことにしたの?」とChipに聞いたら、「ボストンは当時、人種ごとに分かれてしまっていて、人種間の緊張もあった。でも自分がこっち側にいるかぎり、それに対して何もできないと思った。住んで、そのなかの人になることによって、何かできると思ったんだよね」というようなことを、サラッと言っていた。

Chipはとても温和な人で、アクティビストみたいなタイプでもない。むしろ、ちょっと頼りないと思われがちなのかなというところもある。そのChipがそんなふうに思ってここに住んで…という人生には、ちょっと心を打たれます。

Chipには養子として迎え入れたベトナム人の息子さんがいて、一時期はその息子さんも大変だった時期もあったみたいだけど、今は所帯を持って独立して3人の子どもがいる。以前、家の下の階に家族で住んでたときに、ベトナム製のインスタントラーメンに生野菜をたっぷり入れたのを食べさせてくれて、それから「今から踊りに行くけど行かない?」と、きついベトナム訛りの英語で誘ってくれたこともあったなぁ。

Chipは音楽もやっている。ベースとギターと歌を歌う。前に行ったときはオープンマイクに誘ってくれて、私も一曲歌ったのでした。

今回は、Chipの家に泊めてもらわなかったのに、「ぜひ会おう」と言ってくれて、メキシコ料理をご馳走してくれました。ありがたいなあ。お世話になってばかりです。

私は英語もとつとつとしか話せないし、愛嬌もあるとは言えないし、一緒にいて楽しい人間ではないんじゃないかなと思ってたんだけど、こんなふうに時間が経っても大切にしてくれて、嬉しい。

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